もうゼロ年代リバイバルしようかというご時世だけど、これは80年代にリアルタイムでアメリカの雑誌を読んで雑感を書く、という村上春樹のコラムをまとめたものです。こんな本が出ていたって知らなかった。
今の眼で見ると、ううむどうかしら…という内容もあるのだけど、そういうのとは別に、「これが今きてます!とあちらの雑誌で紹介されている人物やトレンドの寸評」が現在のパブリックイメージとはずいぶん違うといった「時代の空気」が面白かった。やっぱりネット上の記録っていつのまにやら行方不明になることが多いし、現時点の感覚で過去に遡って都合よく事実を編集されてしまうこともよくあるから、本の形で残していくのはやはり大切なことだな、と思いました。
一例を挙げると、『ターミネーター』で売り出し中(!)のシュワルツェネッガーはミスターオリンピアを6回獲得、フィットネスの3冊のベストセラーがあり、不動産業者としても成功している。またCBSとABCのスポーツ解説もしている。「早い話が大金持ちなのであって、映画に出演するのはあくまで趣味なのだそうだ。すごいですね。」そういう紹介仕方をされていた時代もあったんですね…
もうちょっと真面目な例だと、有名なPFIの事例である刑務所運営について「私立刑務所」という(どちらかというと批判的な)記事を紹介しているのだけど、『ロボコップ』(87年)の民営化警察の風刺的な雰囲気って、そういう時代感に由来していたんだなと今更納得しました。
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