ザ・フォーリナー/復讐者(マーティン・キャンベル)

 ジャッキー映画ということで侮っているところがなかったといえば嘘になるけれど、予想外に見応えがありました。マーティン・キャンベルはこういう陰惨な話(『復讐捜査線』とか)だと演出が光る監督ですね。(若干ネタバレかもしれません。)

 ジャッキー映画は、どんなに激しい戦いであっても「(基本的に)敵も味方も死なない」というある種の遊戯性が作り手と観客に共有されているから安心して観ていられるけど、それが現実世界だったらどうなるか?が描かれていて、そこも面白かったです(結論:超痛いし、治らない)。

 ところで、これはあえてそういう構造なのかもしれませんが、主人公のクァンはあくまで復讐者としてその目的を果たすだけで、「国家とテロ活動」という物語の枠組みと顛末については、ほとんど関与しないんですよね。一般的な物語だと、主人公の起こした行動が結果として物語を結末に導くところ、主人公がいなくても話は落ち着くところに落ち着いたのではないか、ということになっている。それがクァンの寄る辺なさを強調する意図だったのかは分かりませんが。(個人的には悪くなかったと思います。)

 物語は、押井監督が好きそうな内紛もの、冷えびえとしたポリティカルサスペンスで(ちょっとボーンシリーズっぽくもある)、そこも好みだったのですが、自分としても意外だったのは、見終わった後にとある登場人物について考えて引き摺ってしまったこと。

 実行犯である過激派グループに女性メンバーがいて、彼女はいわゆるハニートラップ要員なんだけど、最後に特殊部隊によって害獣のように「処理」される。罪もない一般人(女子供含む)を平気で巻き込んだことの然るべき報いではありますが、どういう人生を歩んで、あそこまで思想が先鋭化してしまったのか?と思ってしまって。一般人を犠牲にすることに見合う大義など存在しないということは分かりそうなものだけど…

☆☆☆1/2