シン・エヴァンゲリオン劇場版(庵野秀明)

 ついに完結しました。ネタバレなのでご注意ください。しかしそもそもネタバレなどとは別の次元で決着したので、あまり関係ないかも。そして大学時代に「なんかすごいロボットアニメが始まるらしいよ」と噂を聞きつけてきた弟と一緒に、こんな内容で夕方に放送するのかよ…と衝撃を受けて以来の俺の青春にも決着が付いた、という気がしています。

 内容はTVシリーズに始まって、旧劇、新劇全てを通してのエピソードを丁寧になぞり直しています。つまるところ、各所で庵野監督自身がインタビューで答えていますが、「自分なりの父殺し」の物語だったわけです。しかしそれは完遂できず、紆余曲折して25年もかかってしまった。結果、「殺す」のではなく、相手を「認める」こと、「抱きしめる」ことが必要だったんだと気づいた。なぜそれが今までできなかったのかというと、まず初めに「自分自身を抱きしめてあげる」ことが必要だったからではないでしょうか。

 庵野監督は自身の父親に対して複雑な思いを抱きながら、故郷を離れ大阪という新天地で自らの才能を頼りに道を(誰にもできない形で)切り開いてきた。その自負もあったけれど、なぜか割り切れない思いを抱き続けることにもなった。それが今回、25年以上の年を経て、結局エヴァの物語は自分のプライベートフィルムであるという事実に真摯に向き合い、自分を抱きしめてあげることができた。だからこそ故郷の宇部の駅をあれだけ堂々と誇らしげに最後に配置できたのだと思います。

 終わらせきれないのではないかと疑ってすみません。そしてありがとうございました。

☆☆☆☆☆

※ところで大事なところで松任谷由実の「VOYAGER」が流れますが、この曲はかつて邦画SFの威信をかけて作られて盛大にズッコケた『さよならジュピター』という映画の主題歌で、いつか誰かが雪辱を果たしてほしい、それは『シン・ゴジラ』をやり遂げた庵野監督じゃないか、と一部SF者界隈で言われているのだけど、その辺りをフィードバックしたんじゃないかな…と思っておお?!となりました。

※本文でも書きましたが、「気持ち悪い」も、実写を導入するのも、逆張りのアートフィルムみたいなかつてのイチビリ的振る舞いではなくて、必然性があったので、というかよく分からなかったQにすら意味があったという構成だったので、良かったです。