2010-01-01から1年間の記事一覧

カムイ外伝(崔洋一)

この映画は公開時かなりな酷評だったので、どんなものかと観てみたけれど、言われているほど悪くはなかったのではないかという印象でした。 確かにCGの精度は低いのだけれど、邦画はまあ大体そんなものだし、製作者がどのように見えてほしがっているのか心…

ババ・ホ・テップ(ジョー・R・ランズデール)

僕は社会的にマージナルな存在とされる人々が、己の誇りを懸けて戦う、という話が大好きで。例えば『キラー・コンドーム』などが「失笑」みたいな枕詞とセットになっている扱いなのが本気で納得がいかない、といったら気分が伝わるでしょうか?という訳で、…

プリンセスと魔法のキス(ジョン・マスカー、ロン・クレメンツ)

俺はピクサーのアニメが観たいのであって、特にCGアニメが観たいというわけではないのだけど・・・という状況が最近続いており、正直ちょっと食傷ぎみでした。ところがこの作品の評判がいいので、もしかして?と思った次第。 結論から言うと、なるほど好評…

シャーロック・ホームズ(ガイ・リッチー)

考えてみると、ガイ・リッチーはちゃんとロンドンにこだわって映画を作っている人ですね。そしてロンドンといえばシャーロック・ホームズの街でもあるわけで。ロバート・ダウニーJr.はさておき(いや、ちゃんとホームズでしたけれど)、ハリウッド映画に出…

さらば、ベルリン(スティーブン・ソダーバーグ)

ソダーバーグのフィルモグラフィでは、『イギリスから来た男』みたいな小品が個人的には好みで。この映画はジョージ・クルーニーにケイト・ブランシェット、そしてトビー・マグワイアというキャストが器に対して盛りすぎな印象もあるのだけど、そしてその割…

春ジャケあるいは餅は餅屋という話

今回は買えなかった話ですが。 春ものが欲しくなり、そして例によって流行に流されやすい僕としては、ボリオリのドーヴァーがいろいろな意味でハズレがなかろう(ベタすぎでは・・・という突っ込みは当然として)、ということで、それを目当てにお店に足を運…

青春の殺人者(長谷川和彦)

市原悦子と原田美枝子につきる、と言い切ってもいいのではないでしょうか?もちろん一番勢いのあった頃の水谷豊の焦燥感溢れるギラギラした演技も良かった。(内容に触れます。) この映画を紹介するのに「理由なき殺人」という言葉で語られることが多いよう…

地獄の黙示録:特別完全版(フランシス・コッポラ)

アポカリプスなう、という訳で『闇の奥』を読んだらすごく久しぶりに観たくなって。ちなみに「完全版」を見るのは初めてでした。(人によってはネタバレかもしれません。) 翻案だけあって、基本的な精神は記憶していたよりも忠実な映画化でした(どころか、…

チャーリー・バートレットの男子トイレ相談室(ジョン・ポール)

ちょっとえっ?ってなる邦題ですが、原題は『Charlie Bartlett』というわけで、『ジェリー・マグワイア』みたいな人の名前がタイトルというパターン。邦題はすっかり変わってしまうことが多いのでなかなか気付かないけれど、ハリウッド映画では割と伝統的な…

闇の奥(ジョゼフ・コンラッド)光文社新訳文庫版

『Hearts of Darkness』というのは映画ファンならご存知のとおり『地獄の黙示録』の製作現場を追ったドキュメンタリーである訳ですが、何となくざっくり「監督のダークサイド」的な意味合いで捉えていたのだけど、考えてみたら「闇の心奥」つまり闇の奥の原…

ドゥームズデイ(ニール・マーシャル)

巷で言われていたように『マッドマックス2』で『ニューヨーク1997』な話。新機軸はビタイチないけれど、ローナ・ミトラの漢ぶりにやられる。それで充分じゃないか?という監督の投げかけを力強く首肯した、そんな印象であります。 ☆☆☆1/2

パンドラの匣(太宰治)

竹さんに川上未映子、マア坊に仲里依紗というキャスティングを思いついた人、まさに慧眼。映画はまだ観てないのですが・・・きっと観る!本当にピッタリのイメージで、今となってはそれ以外がちょっと思いつかないほどでした。 主人公「ひばり」は戦時下で結…

コララインとボタンの魔女(ヘンリー・セリック)

最初の紹介がティム・バートンとセットだったため、割を食ってる印象が強い監督ですが、この作品でようやく払拭できるのではないかと一ファンとして嬉しかったです。とにかくキャラの造型がキュートでしたね。それと「未来のプリンター」として科学バラエテ…

決断の3時10分(デルマー・デイヴィス)

『3時10分、決断のとき』のオリジナルです。大きな違いは、駅までの道中の行程をあっさりとばすところ。しかもそこからが結構長い。そのため、弾丸の代わりに言葉が飛び交う会話劇としての色合いがより濃くなっていた印象を受けました。しかも息子が同道しな…

秘密諜報部員(W・サマセット・モーム)

第一次世界大戦下のイギリス。劇作家アシェンデンは、取材を名目にどこに旅行しても違和感がない、という立場に注目したR大佐の依頼を受けて、諜報活動に従事することになる。しかしそれは非情な世界であった・・・ MI6に従事した経歴を活かしたエスピオ…

大女侠(チャン・チェ)

奇しくもジミーさん2本立てだったのだけど、希望順位に関係なく送りつけてくるディスカスさんの粋な計らいによるものです。ちょっと前に前作にあたる『大酔侠』も観ていたのですが、いやーチェン・ペイペイが本当にチャーミング(『グリーン・デスティニー…

片腕カンフー対空とぶギロチン(ジミー・ウォング)

実は初めて観ました。この映画はちょっと前に『キル・ビル』の元ネタのひとつとして話題になったし、それ以前から秘宝系のムックでも取り上げられていたのだけど、個人的にはそれよりもっとずっと前のジャッキー映画ブームのどさくさで刊行された「大百科」…

親近感

ユリイカの臨時増刊が中村佑介の特集でした。その中で村田蓮爾との対談という好きな人にとってはたまらないであろう企画があったのだけど、その中で彼は自らを「AV探偵」を呼ぶほどのマニアであることをカミングアウトしていたのでした。キービジュアルの…

似て蝶

紫舟はイ・ビョンホンに似てる・・・気がする。

黒の試走車(増村保造)

同じ増村作品で、血で血を洗う熾烈な企業間闘争という話なら、『巨人と玩具』の方が良く出来ていたような。ストーリーの細部が甘い気がします。高松英郎がほとんど同じ様なポジションの役で出てるのもすごいけど。 ☆☆☆

ぼくの伯父さん(ジャック・タチ)

初ジャック・タチ。噂には聞いておりましたが、画面(というか世界?)コントロールへの執着は尋常じゃない。けれども実際にやっていることは、しょーもないといえばしょーもない小ネタ集というのがいいですね。畳み掛けられるうちについクスリとしてしまう…

Dr.パルナサスの鏡(テリー・ギリアム)

『バロン』のような徹底したナンセンスを期待していたのだけど、そこまで弾けてないというか・・・ヒース・レジャーの件はあれども、その件がなくても落としどころを迷っている印象に変わりなかったのではないでしょうか。「警察に入ろう!!♪」のくだりはモ…

ラブリーボーン(ピーター・ジャクソン)

『指輪』や『キング・コング』の後だからこれでも十分こじんまりなんだろうけれど、『乙女の祈り』のような小品を期待していたのでちょっと詰め込みすぎ、あるいは視点が拡散しているきらいがありました。マーク・ウォールバーグ(本当にいい役者さんになっ…

サリンジャー

サリンジャーが亡くなりました。僕はとてもサリンジャーの良い読者だったとは言えないけれど、(ご多分に漏れず?)高校から大学にかけて通過儀礼のようにして諸作を読みました。享年91歳だったとのことなので、普通だったら大往生と言われる年齢かもしれ…

『Daybreakers』は『アンデッド』の監督作品だったのか・・・

結末のセンス・オブ・ワンダーを感じる大どんでん返しとムチャなアクションが好印象だった『アンデッド』でしたが、その後、スピエリッグ兄弟の名前を見ることがなかったので「弾けそこなったのかなあ・・・」と残念に思っていたのだけど、この1月8日から…

生きる技術は名作に学べ(伊藤聡)

読書カテゴリで何度か書いたことがありますが、僕は模試や授業にでてくる小説が好きでした。教科書の中の抄文から、あるいは問題として引用されている箇所から全体像を推測するのが楽しかったし(小説本体がその推測を大きく覆す物語だったらもっと楽しかっ…

ジャッカルの日(フレッド・ジンネマン)

カラッカラに乾いたドライでドキュメンタリータッチの演出(ハニートラップに見事に引っ掛かってしまう大臣の顛末ときたら...)。プロフェッショナルの意地のぶつかり合いだけでここまで盛り上がるとは!!どこをどうすればウィリスVSギアの『ジャッカ…

真夜中の滑降(アーウィン・ショー)

眼の病でパイロット稼業を辞め、将来の展望もなくやさぐれていた主人公と、戦争の経験から心の中の虚無を締め出すことができない中年ギャンブラーの友情。なんだかふた昔前の仏映画のような組み合わせが泣かせます。 後半の道楽三昧の描写もリアリティがあっ…

ザ・スピリット(フランク・ミラー)

単独で監督するというからどういう作品になるのかと思ったら『シン・シティ』の二番煎じ?「監督」クレジットではあれだけの騒ぎがあったのに・・・という感じで、評判もあまりピンとこないものだったので映画館には足を運ばなかったのだけど。実際に観てみ…

かいじゅうたちのいるところ(スパイク・ジョーンズ)

作品中「かいじゅうたち」の世界に波紋をもたらす、文字どおり「知恵のシンボル」たるフクロウが登場します。しかし、かいじゅう仲間のリーダー格であるキャロルにはその言葉を理解することができません。これは拠って立つ文化が異なるということのメタファ…