ババ・ホ・テップ(ジョー・R・ランズデール)

 僕は社会的にマージナルな存在とされる人々が、己の誇りを懸けて戦う、という話が大好きで。例えば『キラー・コンドーム』などが「失笑」みたいな枕詞とセットになっている扱いなのが本気で納得がいかない、といったら気分が伝わるでしょうか?という訳で、老人ホームで(自身がエルヴィスと信じている種類の)ボケがきた面倒なじいさん扱いされているキングことプレスリーが、吸精鬼と化した古代ミイラと対決する表題作はとても面白かったのでした。(ドン・コスカレリの『プレスリーVSミイラ男』の原作なんですね。)
 集中の白眉はやはり『審判の夜』。テキサスの港町ガルヴェストンを壊滅させたハリケーン(史実)と、鬼畜白人ボクサーと実直な黒人ボクサーの対決をクロスカッティングの手法で描いた中篇。本能の赴くままに行動する男と自己実現のためにボクシングに全てを賭ける黒人青年。二人の激突のテンションの高まりに歩みを合わせるような嵐の到来の描写が実に巧み。読み応えがありました。
 ランズデールを読んだのは初めてだったのですが、テキサスのキング(こちらはスティーヴンの方ですよ)と呼ばれているのも得心のいく作風。俗っぽいところから、いきなり人生の核心に切り込むようなところなど、同じテイストを感じました(もっと輪をかけて下品ですけどね)。
☆☆☆1/2