サリンジャーが亡くなりました。僕はとてもサリンジャーの良い読者だったとは言えないけれど、(ご多分に漏れず?)高校から大学にかけて通過儀礼のようにして諸作を読みました。享年91歳だったとのことなので、普通だったら大往生と言われる年齢かもしれませんが、誰もが思うようにそういうイメージからは遠い。個人的には彼岸と此岸の狭間に生きている人というか、自らをフィクション化したような人生という印象で、ちょっと飛躍しますが『メトロポリタン・ミュージアム』中の「大好きな絵の中に閉じ込められた」という部分を聞くたびに、その幻想的なような寂しく孤独なイメージと相まって、不思議と彼のことを連想したものでした。
もっとも今考えると、当人にしてみればもっと切実な理由があって選んだ生き方だったのでしょう。しかし最近のマイケル・ジャクソンしかり、ある一定以上のレベルを超えて社会に対して何かしらの影響を与えるような人物が抱えざるを得ない業というか、世間の好奇の耳目を集めてしまう何かがあったのも確かだと思います。(そういえば『サリンジャーをつかまえて』が出た時は、みんな読んでたな。)そういう諸々を含めて、自分の学生時代の思い出と分かち難く結びついているので何だか感慨深い。それがおそらく僕と同年代の人だけじゃなく、もっと広範囲に渡って同じような感慨を覚えている人たちがいるのだろうと想像すると、やはり小説の力ってすごいな、と改めて思ったのでした。