2005-01-01から1年間の記事一覧

シビュラの目(フィリップ・K・ディック)

ディックの凄さっていうのは「人間もどき」みたいなパルプ雑誌に載ってたような古典的でオーセンティックな短編から、「暗闇のスキャナー」みたいな人間ドラマ重視の長編まで書くというレンジの広さにもあると思う。この短編集はそういった幅の広さを味わう…

イノセンス(押井守)

前作「攻殻機動隊」のときも同じ感想を持ったのだけど、「ブレード・ランナー」がもっとシンプルな方法で語っていたテーマを、難解というか衒学的なアプローチで語りなおしたにすぎない、ということ。ペダンティックな過剰さというのは「うる星」のメガネ的…

Against The Pull Of Autumn(epic45)

タワレコのリコメンドで手にとって、視聴するとなかなかよかったので購入。こういうジャンルは普段ほとんど聞かないので新鮮であった。(ジャケ買いばかりしている訳にはいかないので視聴コーナーは本当にありがたい。)実をいうと、このジャンルではありが…

保護法

32歳独身というスタンス(スタンス?)を貫くのはなかなかに精神力を要するもので、20代後半だったら年齢にまつわる冗談も気軽にいなせていたのに、最近では「冗談、これは冗談」と自分自身をなだめるのにかかる時間がコンマ何秒伸びている。 先日、ひょ…

ワンピース「オマツリ男爵と秘密の島」(細田守)

ハウルの敵討ちのような快作。でも噂どおり、ターゲットを考えるとワザとのような嫌がらせに近いダークぶり。そこもよし。 デジモンの1作目(それとパイロット版)でも感じられた卓越したビジュアルセンスは健在で、アニメ映画を観る醍醐味にあふれている。…

プリンセス・ブライド(ウィリアム・ゴールドマン)

W・ゴールドマン祭り続行中。 「最後のユニコーン」的なシニカルな視点をもったファンタジー。あるいは「現代においておとぎ話を語るとはどういうことか」について自覚的な小説。ゴールドマンが「プリンセス・ブライド」という小説に出会い、いかにしてその…

殺しの接吻(ウィリアム・ゴールドマン)

最近「ウィリアム・ゴールドマン祭り」を個人的に開催中。彼の作品は何かしら心にトラウマじみた刻印を残すことが多くて、それは必ずしも快いものではないのだけれど凡百の作品より読み応えがある。 というわけで、ブレイクのきっかけとなった実質的なデビュ…

赤い竪琴(津原泰水)

最後の一文まで、とんでもないオチが待っているのではないかと構えながら読んでしまった。ストレートな純愛小説だったので逆にびっくりである。変化しないという種類の変化球だ!という「ドカベン」のセリフを思い出した。 まだこの作者の小説は2つしか読ん…

テン・ペイシス(ザ・ベイカー・ブラザーズ)

なんとなくジャケ買いしたらヒットだった!その逆はものすごく多いから、こういう些細なことでもすごく嬉しいものです。でも2003年発なので、自分が知らなかっただけでリアルタイムでは評判だったのかな。 さてジャンルは英国アシッドジャズの流れをくむ…

ブラザーズ(ウィリアム・ゴールドマン)

「マラソン・マン」が復刊し、先日読了。なるほど、映画もほぼ原作どおりではあった。ただ映画版がほとんどホラー映画チックなサスペンス描写が突出した印象だったのに比べて、原作の方はグロテスクなユーモアとでもいうべき一種独特のテイストが小説の基調…

人間工学

先日grafのプランクトン・チェアが届いた。デザインというか佇まいがかわいいぞこんちくしょうってくらい素敵なんだけど、すわり心地は正直微妙。座面両サイドが上向きに反っていて、かつ、太腿からヒザ側に向かっても上向きに角度がついているという。(…

未来は今(コーエン兄弟)

公開時にたいがい酷評されていたのでなんとなく敬遠してたのだが、今になって(ものすごく遅くなってしまったが)観た次第。 コーエン作品らしい毒が薄く、嫌味かと思うほどのハリウッド・エンディングなのでマニアックな作品が好みのコーエン・ファンからは…

歴史は繰り返す

つまるところ、TVの「電車男」ってネット時代の「101回目のプロポーズ」なんだな。

朗読者(ベルンハルト・シュリンク)

正直なところ、「マディソン郡の橋」的な安くてちょっとセンセーショナルな恋愛話に、卑怯なぐらいシビアなネタ(あえてネタといいきるけど)をもってきた、という印象以上のものは受けなかった。 実際にドイツに暮らしていれば、ナチスという負の遺産は避け…

闇に踊れ!(スタンリイ・エリン)

エリンといえば「奇妙な味」の短編作家としてのイメージが強いが、これは正統派探偵ものの長編ミステリ。 物語は、白人至上主義のサイコ犯罪者の独白で彼の「ある計画」が描かれるパートと、美術品盗難を扱う探偵事務所のエージェントのパートが交互に進行す…

スター・ウォーズ ジェダイの帰還(復讐)

SWサーガをリアルタイムで追っている人の感想で、当時の状況を指して「くまちゃん大行進」にはがっくりきた、みたいな言い方をしているのをよく目にするのだが、本当にそうだったんだろうか?当時はそれで結構みんな楽しんだのではなかったか?斜に構えて…

スターウォーズ エピソード3(ジョージ・ルーカス)

やっぱりこれだけの規模の映画で、これだけ長く続いているということには重みがある。個人的には、そもそも小学1年ではじめて劇場で観た映画がエピソード4で(そのときは副題なしだった訳だが)、それが原体験である。まさにブロック・バスター世代。日曜…

宇宙戦争(スティーブン・スピルバーグ)

やっぱり今やるからには、原作と違う結末で終わりたい、みたいなコメントを監督かクルーズがしてた気がするのだが、ものすごく原作どおりだったじゃないですか!しかもあえてアウター・リミッツとかトワイライト・ゾーン的な(というよりも50年代B級SF…

茶の味(石井克人)

タイトルから連想されるのは小津映画的「古きよき時代の日本映画」。実際、今までアッパーな作風で知られた監督の、しかも外国の市場も視野にいれた(カンヌ出品)作品でもあるので、スローなスタイルで日本の情緒的世界を撮るという方向性の変化には多少な…

最後の一壜(スタンリイ・エリン)

カテゴライズするならば「奇妙な味の短編」ということになるのだろうけれど、不思議と理不尽なオチ(例えると「笑ウせーるすまん」チックな)ではなくて、割とポジティブなベクトルに向いているため、ロアルド・ダールの諸作のようにイヤーな気分になること…

犬にもなれない男たちよ(アーウィン・ショー)

学生時代、所謂ニューヨーカー派の作品を集中して読んでいた時期があって、ショーの作品に出会ったのもその中の1冊としてだった。「洗練された都会小説」というジャンルではどうやってもアメリカ作品に敵うものが日本にはない。それはその国の文学の成り立…

願い星、叶い星(アルフレッド・ベスター)

ベスターの文体はあからさまにパルプ小説の匂いがする。もちろんそれは狙い通りであって、クリシェであるパーツからいかにして目新しいもの、ショッキングなものを作り出せるか、という作者のチャレンジのように思われる。 ただ今の視点でみると、郊外の一軒…

堕天使のパスポート(スティーブン・フリアーズ)

とにかくキウェテル・イジョフォーの演技に尽きる、と思う。のっぴきならない理由によって国を追われている男。登場時にはなんかパッとしないなあと思ったのに、結末に至るころには逞しく頼もしい男として実に魅力的に映る。 演技力があるのはもちろんだろう…

暗殺者(ロバート・ラドラム)

6月下旬には「ボーン・スプレマシー」が発売になるので、復習の意味もこめて原点にあたろうかと手に取った。「最後の暗殺者」を読んだときにも感じたのだが、シンプルな話を持って回ったように語る、というか。僕の中の作者のイメージは「サルまん」で大長…

かけことば

サンドラ・ブロック起死回生の1作として有名な「デンジャラス・ビューティ」をさっきTVで放送していたが、原題である「ミス・コンジニアリティ」って「ミス・コン」にかけてたのね。今頃気づいたよ。

アイ,ロボット(アレックス・プロヤス)

「マニア」ではなくて「ファン」的によく映画を観ている友人たちの間で評判がよかったのを思い出して、DVDを借りてみた。予告編を観る限りではすごくつまらなさそうだったもので、リアルタイムでは見送っていたのだ。 結論から言うと、大変面白かった。ま…

ブランド

「ワンピース」がやっぱりどうにも面白い。泣かせにかかるときのあざとさとか、エピソードの無理くりぶりなんて非道いのに。 それでお気に入りのキャラクターはサンジなんだけど、先日も「男なら女の嘘は黙って許せ」などとキザな台詞を吐いてしびれさせてく…

ホーンテッド・マンション(ロブ・ミンコフ)

映画のアトラクション化が叫ばれて久しい訳ですが、この映画はまさにアトラクション以外の何ものでもない。観終わった瞬間に内容のことなどびた一文覚えてないこと請け合いです。そもそも、ディズニーランドの集客力の低下に対するてこ入れとして製作された…

マーダー・ライド・ショー(ロブ・ゾンビ)

最高!無駄なところがひとつもない。短めにまとめたところも好印象。「悪魔のいけにえ」へのオマージュもの(もはやホラーの1ジャンル)としては一番の完成度ではないだろうか。音楽も絶妙だし(と監督の本業であるホワイト・ゾンビとしての活動をびた一文…

ショーン・オブ・ザ・デッド(エドガー・ライト)

良心的なゾンビ映画なんだけど、しかし間違いなくワーキング・タイトル作品でもあるという。 基本的にワーキング・タイトル製作の映画はすべて人情(ラブ)コメディーで、それに英国気質をまぶしてあるというつくりであって、あとはスター女優との恋であった…