2021-07-01から1ヶ月間の記事一覧

虹色と幸運(柴崎友香)

日常系、語りに仕掛けがあるギミック系、毒のある話、若干超常系と著者の作品はいくつか分野があるけれど、『フルタイムライフ』みたいな日常系でしたね。 ふとしたきっかけでとても親しくなって、ある時期を境に疎遠になったり、また久しぶりに集まるように…

トゥモロー・ウォー(クリス・マッケイ)

(ネタバレ)こういうジャンルの映画の難点をあげつらっても無粋なだけなので、むしろいい湯加減の映画だなと楽しんだのですが… ・とはいえ、タイムパラドックスについては考えないわけにはいかなかったですね。過去(現代)で解決したら分岐した「そうでな…

オッドタクシー(木下麦)

こんなに次が気になったドラマは『トゥルー・ディテクティブ』以来かもしれない。日本で正攻法でハードボイルドをやるとともすればコント風になるのを、動物にすることで上手く回避しかつやり切ってましたね。 人物とエピソードの出し入れがとにかく的確。主…

アド・アストラ(ジェームズ・グレイ)

(ネタバレ)外界の刺激に心を動かされないように進んで感覚を摩滅させてきた人間が、とある任務を携えて容易に足を踏み入れられない闇の深奥(ハート・オブ・ダークネス)に乗り込んで行く… これって『地獄の黙示録』というか『闇の奥』じゃないか、と思っ…

EVA〈エヴァ〉(キケ・マイーリュ)

村上春樹作品をスペインで実写映画化、みたいな話でした。映画の構えが大きくないのも好印象だったですね。 ☆☆☆1/2 ※スペインの雪景色というのが新鮮でした。それにしてもアマゾンの紹介はネタバレすぎだろう…

いろいろのはなし(グレゴリー・オステル)

閉園後の遊園地、メリーゴーランドの馬たちを寝かしつけるのに園長はお話をします。しかし馬たちはなかなか物語に満足せずに、登場人物のその後を知りたがります。求められるままに園長はお話を語り続けるのですが… 「つまるところ物語とは登場人物のエピソ…

ブラック・ウィドウ(ケイト・ショートランド)

結論を言うと大好物でした。時々アベンジャーズ関係の用語が出てくるから「そういえばマーベル映画だった」と我に返ったけど、特に前半はボーンシリーズみたいなエスピオナージュ・アクションでしたね。(007やMIにも目配せがありましたが。)そして舞台が変…

アメリカン・スリープオーバー(デヴィッド・ロバート・ミッチェル)

スターじゃない普通のアメリカ人は不格好だな(というかどこの国でも一般人がカメラに撮られたらそんなもんだよな)と思ったのと、ちょっと台風クラブっぽいなと思いました。ここから『イット・フォローズ』に行くのだからすごいですね。(あれは同じ廃墟か…

エクストリーム・ジョブ(イ・ビョンホン)

ひと頃の韓国クライム・アクション映画は陰惨かつ苛烈なバイオレンス描写が代名詞でしたが、それこそエクストリーム化していくとそちらには展望はないとかねがね思っていたのだけど、バイオレンスじゃないもう一方の要素というか、くだらなくてあまり笑えな…

掃除婦のための手引き書(ルシア・ベルリン)

リディア・デイヴィスが「声」という形で表現面で高く評価しているから、原語で読んでこその作品なのかな、とも思ったのだけど。 私小説的な側面がある作品なので、それでいうとブコウスキーみたいにぶっ飛んだ感じまでいかないと引かれないというか。同じ翻…

クレイジー・リッチ!(ジョン・M・チュウ)

信じられないくらいリッチなセレブリティを画として見せ切ったのが素直にすごいと思いました。アジアロケなら相対的に安くできるであろう、今ならアジア人観客をターゲットにすればリクープは間違いない、だからこういう(筋だけでいえばシンプルで古典的な…

パンとバスと2度目のハツコイ(今泉力哉)

『愛がなんだ』が大ヒットしたのは、物語にフックがあったからというか全方位的にフックしかないというか、人口に膾炙してむべなるかなという感じだったのだけど、今作はもっと繊細な人間関係のあわいを描いていて、個人的にはもっと好きでした。(どちらの…