オッドタクシー(木下麦)

 こんなに次が気になったドラマは『トゥルー・ディテクティブ』以来かもしれない。日本で正攻法でハードボイルドをやるとともすればコント風になるのを、動物にすることで上手く回避しかつやり切ってましたね。

 人物とエピソードの出し入れがとにかく的確。主人公は決してヒーローではない普通の人なんだけど、個人的に譲れない倫理と矜持のためには一歩も引かない。そのために(妥協すれば)不必要な危険にも巻き込まれるけれど、それが自分の生き方だからと粛々と運命を受け入れる。正に典型的なハードボイルドの主人公※1。加えてファム・ファタールや心の弱い(結果主人公に迷惑をかけてしまう)友人などの配置も抜かりないし、汚職警官、目的が共通のギャングとの束の間の共闘など、およそ思いつく限りの全部乗せ。これらが破綻なく構成されていたのが巧みでした。※2

 一方気になったのは、(この作品に限らず)インディ作品に多いダイアローグが小劇場系というかコント風な傾向が好きじゃないんだけど、今回はワイズクラックだと思えば(ハードボイルドなので)飲み込めなくもないかな、と思いました。ところで、これもまたハードボイルドらしい要素としてモノローグによる進行がいくつかのエピソードであるのだけど、せっかくの書き言葉での「気取った」言い回しなのに、フリガナがなかったせいか声優さんが正しく読めてなかった箇所がいくつかあったのですね。あれって演出の段階で是正できなかったのかな…

 ともあれすごく面白かったです。でも続編に色気は出さないでほしいな。

☆☆☆☆

※1 主人公、炭治郎の声の人ってすぐ気付きました?クレジットでびっくりした。

※2 ご存じの通り結構ハードボイルドって雰囲気で押し通すことも多いので。