収録作中では表題作のリチャード・マシスン「おれの夢の女」がいかにも彼らしいスパッとオチの決まった短篇らしい短篇で良かった。妻の予知能力を商売道具にしたろくでなしの末路は・・・とストーリーのさわりを書いただけでもうオチが分かってしまうような定番話で、そしてやっぱり予想したとおりの結末にたどりつくのだけれど、それでも「読ませる」し「楽しませる」というのが名人芸なんですよね。なんだか落語みたいですが。
一方全然知らなかった人で英国女流作家のシリア・フレムリン「特殊才能」。素人の文芸サークルに現れた謎の男。退屈な自作を朗読する彼は、人を恐怖させることに関しては特殊な才能があるとうそぶくのだが・・・日常生活でも思い当たる節があるような、リアルな心理描写を丹念に重ねていくスタイル。マシスンとは逆にどういう結末に持っていくつもりか先が見えないのだけど、最後は予期せぬ怒涛の展開に。細部はリアルなのに全体としては平仄が合わないような、それこそ「夢」のような感触の話。これが一番だったかな。
ただアンソロジーとしては、ブラウン、ブロック、ブラッドベリ、ジョン・コリアといったど真ん中の作家を擁しているにも関わらずあっさり風味で。最近の異色作家ブームで復刊したのでしょうか?もうちょっとパンチがほしかった。
☆☆☆