ジェニファー・ガバメント(マックス・バリー)

マイレージキャンペーンをきっかけに始まった企業間抗争によって、全ての会社が2グループいずれかに属している世界。そこでは政府は無力化しており、各個人はファミリーネームの代わりに勤務先の企業名を名乗ることが義務付けられていた。皆が利己主義に走るそんな歪な世界にあって、筋を通すことを第一義にしている女性政府捜査官がいた。彼女の名はジェニファー。

要するに、ディストピアものSFであり、女性が主人公のハードボイルド小説である。まんまクリシェで(例えば主人公は離婚暦ありで子持ちの女一匹狼)、読み終わった1秒後には内容を忘れてしまうような物語であるが、それがどうしたエンターテインメントはそれでいいんだという潔さがむしろ清清しい。実際、スノウ・クラッシュの小賢しさと比較したら100倍は好印象であった。

実は作者はオーストラリア人だそうで、グレッグ・イーガンなんかもそうだし、あちらは元気がいいですね。ところですごく映画化しやすそうな題材なんだけど、そういう話は聞かないなあ。(と思ってググってみたら映画化されるようだ。さもありなん、ビジュアル先行の話作りという印象だもん。)