ヨット・クラブ(ディヴィッド・イーリイ)

表題作は映画「パイレーツ」を何となく思い起こさせるテイスト。まるで違う話なのに。

「異色作家」選集がブーム、というかブームにしようという雰囲気である今日この頃。そのいくつかに接しての暫定的な結論。僕にとって異色作家とはロアルド・ダールだけである。もしくは「南からきた男」系の作品だけである。
まあ人それぞれだと思うけど、個人的には①乱歩いうところの「奇妙な味の短篇」という言葉から想起されるイメージ、②「あなたに似た人」のTVシリーズ化「予期せぬ出来事」の画質、音楽も込みのあのトーン、の2点による刷り込み効果がかなり大きい(と自覚している)。

上記は本当に余談だが、異色作家といわれると、やっぱりどうしてもそういう展開の作品を期待してしまって。だから出来、不出来はさておき、この短編集のなかでは「面接」や「カウントダウン」なんかが期待通りの話であった。

さて、純粋に作品として一番好きだったのは「タイムアウト」。これまた個人的な話になるけど、文科系の大学(学部)に進んで一番ショックを受けるのは、専攻する学問があまりにも細分化されていることではないだろうか?(僕があまりにウブだっただけかな・・・)
僕は歴史専攻だったのだが、ある国の、ある時代の、ある地域(町)の特定の産物の商取引だけを勉強するようなことが、いつか当たり前になってしまう。というか常識なんだけど。まったくこのジャンルの学問に関係のない人から見たら、それが何かの役に立つのか?と正直思うだろう。勉強してきて今いえるのは、「立たないこともない」ということですが。
だから、例えば「漫画が学問の研究対象となりうるか?」みたいなことはよくいわれるが、あるジャンルが学問の研究対象となりうるか否かは、その「質」ではなくて、研究の掘り下げに堪える「細部」と「枝葉」をそなえているかという「量」の問題だといえる。大胆に言い切ってしまえば。

ええっと「タイムアウト」はそういう話でした。そう読めました。