「ちょっとだけ事実入ってます」という「ちょっとだけ」の腰の据わらなさが、映画全体の出来に反映していたようで。
実は、リチャード・ギア演じる主人公のひとりが「セルビア側の民族浄化の黒幕をとっ捕まえてやろうと思ってる」と言い出してからの展開に少し期待してました。もっと具体的に例を出すと、『スリー・キングス』の「状況は殺伐としてるのに映画そのものの空気は不思議と浮世離れしていて、何だか寓話じみたニュアンスを帯びてくる」という感じが好きで、あんな展開になるといいなと思っていたのです。(まああれは元々「東方の三博士」を踏まえていたわけで、そこは狙い通りなのですが。)
ところがそういう方向にはいかなかった。というか、どの方向に踏み出そうか躊躇している内に終幕を迎えてしまったという印象。思い切りが足りない?純然たるアクションを志向するなら『エネミー・ライン』がありましたが、そういう感じでもなかったし。
ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争はとても込み入っていて(そもそも戦争とはそういうものですけど)、この作品も状況に対してフェアだったかについては微妙だと思ったのですが、なまじノンフィクションの要素を導入している分たちが悪いかもしれません。真剣に取り組むなら『ノー・マンズ・ランド』ぐらい徹底してほしいけれど、そうなると別の映画になってしまうんだろうなあ。そこを何とか脚本で工夫するのが映画制作者の腕の見せ所だと思うのだけど。もう少しで一皮剥けそうな雰囲気もあっただけに(猟場に集う戦争ジャーナリストの生態なんかはとても面白かった)惜しかったですね。
☆☆☆