つまるところ、ストックホルム症候群の話でしたね。
と、変な照れ隠しみたいに茶化さずにはいられないほど実はハードコアでディープな作品。冒頭こそ昔の映画によくあるようにトゥーマッチな演出が製作者の意図を超えて「おもしろ」になっている、という展開なんですが、「これはちょっとあれだなぁ・・・・面白いけど」と隙を見せた瞬間、ワン・ツーのクリティカルブロウを喰らってしまった感じ。後半の展開は反則だよー・・・
モデルのアキは、ある日自身をモデルにした彫像に異様な執着を見せる男を目撃する。数日後、偶然呼んだマッサージ屋は正にその男、蘇父道夫であった。突然アキを拉致監禁する道夫。実は偶然を装った計画犯罪だったのだ。彼は先天性の盲目で、暗闇の世界で理想の女体を捜し求め、ついに見つけたのがアキだという。彼女をモデルに彫刻を作りたいという申し出に、あの手この手で脱出を試みるアキ。母親の溺愛ぶりに目をつけた彼女は逃走の手段として道夫を篭絡するが、演技のはずだった愛情表現はいつしか本気になって・・・
長くはない尺の中でいろいろ見せ場の多い作品なのですが、最大の見所は(個人的には)道夫を巡る母親との直接対決。快楽を先鋭化させていく後半は確かにショッキングなんだけど、演出で純粋に興奮させられたのはやっぱりそのシーンでした。それと役者がすごい。緑魔子を見ていると、勢いがある時の役者のオーラってやっぱり違うなと思います。(本当は何だか妙に説得力のある船越英二の「切ない感じ」も評価すべきなんでしょうけれど。)
もしかしてこれからご覧になるかもしれない方のために結末は書きませんが、これは相当。フィジカルな恋愛というものはどうしても一種のファンタジーとしてしか了解できないので、(こんな特殊な状況でなくても)共感は全然できなかったのですが、不思議と詩情のあるエンディングがよかったです。
☆☆☆☆