香川照之の(『カポーティ』でのフィリップ・シーモア・ホフマンを超えたと言っても過言ではない)「水木さん」憑依演技や、鬼太郎のマンガでおなじみの「ビビビビビビン」を実写化するとこうなるのか!というビンタ演出。そしてそのビンタの反復が生み出すドラマ自体のバイブレーション。と、いった具合に見所が多かった力作でした。
正直言って、「鬼太郎が見た」というキャッチはちょっと看板に偽りありだったけれど、劇中の鬼太郎の声に野沢雅子(戸田恵子でなく)を選択した一点だけでも製作スタッフの慧眼を賞賛したい。というのも、少なくとも僕にとっては戦争の暗さを引きずっていない「鬼太郎」は鬼太郎ではないから。そもそも「妖怪」とは高度経済成長のダークサイドの表象だったはず(理屈ぬきで水木さんが妖怪が好き、というのももちろんあると思うけれど)。
カラー一作目のシリーズは、前半で原作を消化しつくして鬼太郎とは関係のない南洋怪異譚などがエピソードとして取り込まれていったのは有名ですが、『アンコールワットの亡霊』『地相眼』など直球で戦争が影を落としている物語も多い。となれば、戦争の悲惨を語る物語の傍観者である鬼太郎の声は野沢雅子以外考えられない訳で。(ねずみ男の声もそれに合わせて大塚周夫というのもよかったですね。)
☆☆☆☆☆