スタローンとルトガー・ハウアーが激突!と聞いたら、「その組み合わせ、2人が旬な頃に観たかったよなあ」ってなると思うのだけど、実は2人が(ほぼ)旬といえる時期に競演してたんですね。
あれ?皆さんご存知でしたか・・・不明を恥じなければと思いつつ観たのだけど、これはかなり濃厚に70年代刑事ドラマの作劇(製作は81年)ですね。時期的には『ランボー』の1年前で、(スタローンが自らその一翼を担うことになる)15分ごとに何かが爆発するようなブロック・バスターアクションが台頭する前夜、ちょうど過渡期的な時期と位置づけられそうです。
内容自体もまさしくそういう印象で、前半、有能だけれどはみ出し者の刑事(スタローン)と冷酷で必要以上に殺人を好むテロリスト(ハウアー)が追いつ追われつの心理戦を展開するところは、手がかりの少ないところからどうやって犯人を探し出すのか?というドラマで地味ながら手堅く盛り上がる。
しかし後半、ちょっと顔を見られたくらいでテロリストが暴走して、NYに集まっていた各国大使の乗ったロープウェイを乗っ取るという暴挙に出てしまうんですね。映画的には画になるアクションを、という計算かもしれないけれど、『狼たちの午後』を引き合いに出すまでもなく(出しちゃったけれど)、大勢の人質を盾にしたその手の作戦は成功させるのが非常に困難だと犯人も分かっているはず。そもそもテロリストとしての実力を自分の属する世界に宣伝するため、いわばひと旗揚げにNYに出てきたはずなのに、何ゆえそんな無茶というか自棄をおこしたのか、その心理の動きがよく分からない。
指摘ついでに、バディものの要素も入れてみたかったのか黒人の相棒(ランド男爵)も一応いるのだけど、暴走しがちな主人公に大人な助言をしてくれるでなく「うん、そうだな」しか言わないカキワリみたいな存在。あと別居している妻とのすれ違い描写もおざなりで、そういった人間ドラマがクライマックスに向けて収斂せず、はみ出しデカにはそういう嫁と相棒がいることになってるから・・・と、なんとなく配置されている印象しかない。
けれども、この作品がつまらないかといえばそうじゃないのが面白いところで、映画ってやっぱり単なる要素の足し算じゃないんだなと思いました。タイトな尺も2時間超が当たり前な昨今のアクションに比べたら好ましい。それとやはり(人物造型的には疑問があるとはいえ)テロリスト役だけど得体の知れない魅力を放つハウアーの存在は大きかった(この前観た『女王陛下の戦士』では国の英雄でしたが、案の定なんかストレートにヒーローじゃなかったなあ)。
☆☆☆1/2