その土曜日の朝、米国諜報機関の工作用偽装会社「マーフィー・ノックス」の社員たちは休日出勤命令にうんざりしていた。何でも重要な会議とのこと。ところがその議題は「ビルは封鎖した。君たち全員に死んでもらう」というものだった。しかし彼らとて腐っても工作要員、唯々諾々と命令に従うはずもなく・・・かくして血で血を洗う密室のサバイバルが始まった!
邦訳前作の『メアリー−ケイト』が相当弾けたサスペンスだったので、作者にどれだけ引き出しがあるものかと、また読んでみました。雰囲気を申せば初期のコーエン兄弟やライミ作品風のスラップスティックでバイオレントなナンセンスコメディ風。(というと、『XYZマーダーズ』ってこと?って話ですが、実際そんなに離れてない感じです。)冒頭で頭を打ちぬかれた男が、終幕近くまで延々繰言を述べる描写なんかもあったりして。ただ細部の整合性などはガチャガチャで、ストーリーテリングの妙で読ませるというよりは、とにかく次はどうなる?という勢いと興味を引き付けることに徹したページターナーという印象でした。
ところでスウィアジンスキー作品が面白いのは、「ご当地アクション」にこだわっているところで、今回も舞台はフィラデルフィア(未訳作品もそうらしい)。フィリー・アクション。あちらの人だと「そうそう!」ってなるネタも色々ありそうなんだけど、あまりピンと来ないのが残念です。ともあれ、あの手この手を繰り出して楽しませようという豪腕ぶりは結構好きでした。パルプ小説の最新型ということでしょうか。切り株描写も満載なので、そういうジャンルがお好みの向きにもアピールするのでは?
☆☆☆1/2
※そうそう、最近には珍しく、(アメコミ風の)挿絵が付いているのですが、夢に出てきそうな陰惨なイメージでそこがグッときました。何か『クリープショー』の決め画みたい。ECコミック風?