ワイルド・バレット(ウェイン・クラマー)

 イタリアンマフィアの構成員ジョーイは、麻薬取引の際、金を掠め取ろうとした悪徳警官を射殺した銃の処分を命じられる。それは何でもない仕事のはずだったが、隣家に住む息子の友人オレグが継父を射殺(未遂)したことからあらぬ方向へ・・・
 冒頭こそパルプ・フィクション発ロック・ストック経由のタランティーノ・フォロワーみたいだったけれど、オレグが逃走してから俄然面白くなりました。あと一歩のすれ違いで「その銃」が手に入らない、状況設定の妙。練られた脚本(監督自身によるもの。元々脚本出身の人なのかな?)も良かったけれど、正攻法の演出でいける監督なんだと思います。(それだけに、カッコいいつもりで時々入るガチャガチャしたエフェクトやカメラが逆にもったいない。)
 ところで途中で気付くのですが、これはジョーイじゃなくてオレグが主人公の「地獄めぐりの一夜もの」の変奏なんですね。気丈な娼婦に優しくされたり、変態夫婦に拉致されたりの大活躍。とりわけ変態夫婦の家のいわく言い難い不穏な空気感。まだなにも起こっていないのに、何だかイヤーな感じが画面から滲み出てくるというのは演出力あってこそだと思います。(「森の悪い魔女の家に誤って足を踏み入れた少年」という雰囲気、それこそまさに狙いだったのだとエンドロールで分かるのですが。)
 ただ、結末は(あってもいいんだけど)蛇足かなあ。「試写会の反応をみて速攻撮り足しました」感がありありなんだもん。その直前まではもっと高評価だったんだけど・・・と考えると「終りよければ」の言葉どおり、たとえ数分であっても結末の在り方は本当に重要ですね。でも隠れた佳作だと思います。
☆☆☆☆