星を継ぐもの(ジェイムズ・P・ホーガン)

 科学者ハントは国連宇宙軍の特命プロジェクトに召喚される。それは、月の調査隊が発見した信じられない存在、推定年代5万年前の「真紅の宇宙服を着た人間」の謎を解明するというものだった。時を同じくして木星の衛星ガニメデで宇宙船が発見される。それは人類とは異なる種族の手による、超高度な宇宙航行テクノロジーを搭載したまるで「箱舟」のような存在だった・・・はたして2つの発見に関連はあるのだろうか?
 まるで良質のサイエンス・「ノンフィクション」のような感触。推論に推論を重ねて結論に辿り着く過程が実にエキサイティングなのですが、作者は演繹的に物語を構築したのではなくて、(まあ当たり前なんだけど)結末から逆算してエピソードや「新発見」を配置していっているんですよね。その手さばきが実に巧み、かつタイミングが的確。考えてみたら「科学の分野の大発見にまつわるノンフィクション」も結末ははっきりしているのに、それでも「読ませる」話にするのが腕の見せ所なわけで。なるほど必然的に似てきますよね。
☆☆☆1/2
王立宇宙軍っていう用語はこの作品へのオマージュだったのかな?
※悪い意味での「専門バカ」より、大局的な見地に立てるジェネラリストをよしとするスタンスに、先日読んだ『宇宙船ビーグル号』を思い出しました。