光車よ、まわれ!(天沢退二郎)

 天沢退二郎というと、僕にとってはまず宮沢賢治のよき解説者としてのイメージがあるのだけど、「日本におけるファンタジー」が話題になると必ず挙げられるこの小説が前々から気になっていました。
 せっかくだったら本当に子供の頃に読みたかったなあというのが正直な感想。詩人だけあって、整合性よりもイメージ優先なところがありますが、付け焼刃でない日本ならではの幻想世界がしっかり確立していてぐっときます(「夜間閲覧室」のイメージの魅力的なこと!)。「大人の感覚ではなんでもない距離と範囲なのに子供の主観では大冒険」とか、「(大人の常識では理解し難い)子供の独自ルールのしばり」みたいな要素が上手く導入されていて、幼い頃の記憶がくすぐられました。ここら辺もさすが詩人の面目躍如といったところでしょうか。ところで主人公達は設定上は小学6年生なんだけど、もうちょっと幼い印象だったですね。
☆☆☆1/2