僕達急行/A列車で行こう(森田芳光)

 森田監督の遺作となった訳ですが、そういうことを予期していたのかどうか、奇しくも原点回帰なつくりになっていましたね。「つくりもの」を意識させる特異なセリフ回し、突然出現するコーヒーカップ、すっとんきょうなSEといったおふざけの演出。伊藤克信(『の・ようなもの』)を一瞬ながらあえて登場させているのもそのサインのような気がしました。
 全体としては結末の超ご都合主義の展開を含め、続編をいくらでも作れるようなカッチリしたフォーマットで構成されていることもあり、昭和サラリーマンものの再現を狙っていたのだと思いますが、嫌いになれない作品です。泣かせよう、笑わせようといった貪欲さを周到に排して、実にリラックスした映画。それが主人公たちの人となり、関係性にも二重写しになって、これからの二人をまた観てみたいと思いました。それだけに残念です。
☆☆☆1/2