第一次世界大戦下のフランスの小さな町。撤退するドイツ軍の仕掛けた時限爆弾のため、住民はみな退避するが、混乱のどさくさで精神病院の患者達が解放される。思い思いに着飾った彼らのため、町はさながらカーニバルの様相。爆弾撤去に送り込まれた伝書鳩係の主人公は、意思疎通もままならない中孤軍奮闘するのだが・・・
カルトかつ名作との誉れ高いこの作品ですが、「人殺しに邁進する軍隊と、自らの世界に充足する患者たち、いったいどちらが正気なのか?」という「反戦寓話」としての作りがあまりにも図式的にすぎて、今の眼で観るとちょっと厳しかった(というか、公開当時でもそうだったかも知れないけれど)。これは好みの問題ですが、『僕の戦争』とか『不思議な世界』(あれ、どっちもリチャード・レスター作品か)みたいな、テレ東の昼の映画?それとも午睡の夢?というくらいシュールさの針が振り切ったものが好きなので、ちょっとパンチに欠ける印象でした。
ただ、ヒロインが主人公のところへ見舞いに行くのに電線にふわりと降り立つシーンや、患者たちと一緒に町に開放された動物たちのイメージは、それこそ「まぼろし」のような夢幻的なムードで、むしろその曖昧さこそがこの映画のファンにはたまらないのかもしれないですね。
☆☆☆