惑星大怪獣ネガドン(粟津順)

 ここまでのものを作られたら、ただもう感服したというほかない。ほぼ独力によるフルCG特撮作品。

 昭和100年に沸く日本に迫る災いの影。それは火星テラフォーミングによって長き眠りを覚まされた大怪獣ネガドンだった。事故で引退し、余生を無為に過ごしているロボット工学の権威、楢崎博士。対抗できる手段は彼の「MI−6」2号だけだ!

 まさに子供の頃わくわくしてみていた「怪獣映画」のエッセンスをギュッと25分に濃縮したような作品。しかも「今見るとやっぱり子供だましだったよね」的な斜に構えたスタイルではなく、大人の技術で有無を言わせぬ作り込まれた世界。

 アクション映画の良し悪しの僕の判断基準のひとつは、「アクションに対するリアクションの描写に気配りが行き届いているか」なんだけど、その点も素晴らしかった。戦車が止まる瞬間の前傾でのキャタピラの沈み込み、博士のメガネのレンズへの背景の写り込み(蛍光灯の光まで!)、「この映画を撮っているカメラ」に水滴が飛んで張り付く、等々。加えて蛾やカエルなど生物のテクスチャーの繊細さはメジャー作品でもなかなか見られないレベルを達成している。

 コンテの切り方はさすがに「エヴァ」「ガメラ」後の作品なので樋口真嗣の影響が感じられたが、その点でも正しくインディーズ魂の継承者なんだと思う。
このインタビューも興味深かったです。
☆☆☆☆