魔法使いになる14の方法(V.A)

要はハリー・ポッターバブルの1冊なのだが、こういうアンソロジーは普段手に取る機会が少なかったり、短編集が邦訳されていない作家の短編が多く収録されていて、バブルではあっても読めるのは素直にありがたい。

ただ編者の紹介文がやや的外れで、日本人による解説がそれに輪をかけてあさっての方向を向いているのがいかがなものかと。各作者のバックグラウンドや読解の手引のような資料的な側面(低学年も射程に入っているなら、というか、つくりからするとそのはずだから)を充実させてほしかった。

全体を通して読むと、ダールやブラッドベリが収められているように、単純なファンタジーというよりはダークファンタジーあるいは「奇妙な味」の短編集的な性格が強い。なかには性的虐待を扱ったノーランの「わたしはドリー」のような明らかに大人向けの作品があり、その一方で「砂の妖精」(サミアどん!)のネズビットのユーモア・ファンタジーがある、というようにクオリティとしては粒揃いであっても方向性はそれぞれ随分バラバラな印象であった。

ダイアナ・ウィン・ジョーンズ他」というクレジットになっているようにジョーンズが大フィーチャーされている(邦訳としては)のだが、作者名に憶えはあっても何の作品で有名な人なのかピンとこなかった。ハウルだったのね!。子供むけでも底に流れるシニカルな現実味はさすが英国作家という印象。あまりにも面白かったから「ダークホルムの闇の君」を次に読んでおります。

☆☆☆1/2