息吹(テッド・チャン)

 SFは、現状発明または発見されていない事物・事象そのものの面白さに軸足を置いたものと、それが社会に与えるインパクト、変容を中心に描くものがあると思うけれど、テッド・チャンは明らかに後者ですよね。私は両者のバランスがとれたもの(といっても結局のところ完全に読者個人の案配ですが)がやっぱり好きだな、と改めて思いました。具体的にいうと初期のイーガンの短編みたいな作品。そういいながらケン・リュウなんかは情緒に拠りすぎている感じがしてちょっとずるいな、という印象を持っているから本当に好みの問題なんだけど。

 という私としては、物語のダイナミズムとSF的思弁が不可分に結びついた「商人と錬金術師の門」が好きでした。(SFマガジンで既読。)「息吹」も読んでいましたが、遥か遠い未来を想像すると何だか宇宙規模の不安を感じた中学生の頃を思い出しました。

 一方、「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」は長いわりに(言いたいことは分かるものの)ピンとこなかったし、「不安は自由のめまい」は量子力学ネタはもういいんじゃないかという気になりました(その点ではイーガンの諸作もそうなんだけど)。『あなたの人生の物語』にも世間で言われるほど感銘を受けなかったし、作者とは相性が悪いのかな。

☆☆☆1/2