エンパイア・オブ・ザ・ウルフ(クリス・ナオン)

 近年、ハリウッド映画(ブロック・バスター的なやつ)の影響を良くも悪くも大きく受けたフランスのミステリ(エンターテインメント系)作家が増えている印象があって、例えばブリジット・オベールは『マーチ博士の四人の息子』こそ緻密な推理小説のテイストだったけれど、ゾンビ映画のパロディ的な『闇が噛む』やB級ハードボイルド路線の『カリブの鎮魂歌』になると投げっぱなしジャーマンみたいな有様でした。(そういえばミステリのスリップ・ストリーム風だけど、ダニエル・ペナックのマロセーヌシリーズも絵的に「見せる」要素を意識していますね。)
 なぜこういう前振りだったかというと、もろハリウッド系の作家として一番に思い出すのがこの映画の原作者であるジャン=クリストフ・グランジェだから。とにかくプロットは、猟奇的な殺人が発生→謎が謎を呼び、混迷する展開→そこには巨大な組織的陰謀が!→ドカーン!!→伏線はどっかいっちゃったけど、めでたしめでたし。と考えておけば間違いない。読んでいる間は面白い(仏版横溝正史みたいで)のでまあいいんですが、見事に全部同じ展開なんですよね。(EX.『クリムゾン・リバー』、『ヴィドック』:脚本)
 と言う訳で、これも期待に違わず上記のパターンでした。頑張って伏線を追っていっても最後には徒労感が・・・でもまあ面白かったです。おとそ気分でのんびり観るにはちょうどいい塩梅。
☆☆☆