タイトルに「孤児」とあるように、アイデンティティにまつわる物語でかつ箱庭感覚の世界観、となるとディックを連想するかもしれないけれど(僕だけかな?)、共通の要素はあるのにテイストは全く違う。
全体としてはむしろディケンズ的なクラシックな「物語」を志向している作品だけど、こちらの読む姿勢が構えすぎていたのか、現代小説的な語り口(信頼できない語り手であることを戦略としてあからさまに匂わせている)とのギャップが最後まで拭えなかった。訳文の質かもしれない。ツボにはまれば堪えられない作家なのかなあ。
☆☆☆