いい意味で完璧な通俗小説。『ブリジット・ジョーンズの日記』はまんまこれの現代版リメイク、というか「すべての物語は全て語られてしまっている」という言い方があるとおり、ジェーン・オースティン作品というのはラブコメの原型なんだな、と思った。ダーシー様はコリン・ファースでもよかったんじゃないの?と思ったらTVフィーチャー版では彼が演じてるそうで。(いやマシュー・マクファディンも大概ベストキャストだったですが。)
夏目漱石がジェーン・オースティンのファンだったというのは、漱石の作品中で彼女や『高慢と偏見』に言及されることが度々あるので、知識としてなるほどという感じだったのだけれど、実際映画を観てみると「閉じた環境」での「男女間の(恋愛の)駆け引き」というつくりからいっても共通点が多く、納得。(邦画で『三四郎』とか作ってくれないかなあ。今の恋愛映画ブームの勢いがあれば何とかなるのでは?)
話をこの映画に戻すと、古典的な物語の枠組みと比較すると意外なくらいスタイリッシュな画作り。舞踏会でのベネット家の様子を長まわしのカメラで追ったり、360度カメラをぐるぐる廻したり、時々ハッとするようなグラフィカルな構図だったり。そういう点も楽しめました。
登場人物の造形として、お母さんの俗っぽさとか妹のはじけ加減描写に容赦ないのもメリハリがあった。役者のアンサンブルもよかったですね。地元で評判の美人のお姉さんというキャラのあまりのはまりぶりに最初気がつかなかったけど、元ボンド・ガールのロザムンド・パイクが魅力的。キーラ・ナイトレイは(今となっては)ナタリー・ポートマンより勢いがあるって感じが画面からも伝わってきました。
☆☆☆☆1/2