ダークタワー(ニコライ・アーセル)

 あえてキングがらみでいえば『タリスマン』的ジュブナイル映画としては悪くない、というかむしろ好きでした。特に「我は手で撃たぬ。手で撃つ者、父親の顔を忘却せり。我は〈気〉で狙い定める。」を唱えるシーンなんて、見えを切るという感じで否応なく盛り上がるじゃないですか。

 ところで『ドクター・スリープ』もそうだったけど、原作以上にキング・ユニバース趣味が押し出されていたような。あんなに「シャイニング」っていってなかったですよね?

 映画版と割り切ればイドリス・エルバも悪くなかったし、黒衣の男マコノヒーもとても良かった(むしろこの人で映画が持ってた印象があります)。主人公はリバー・フェニックスっぽかったですね(若干ベーコンぽくもある)。

 続編が作られなかった3部作の1作目的雰囲気は否めないけれど…

☆☆☆1/2

ウィリアム・ゴールドマンの脚本だったらどんな感じだったのかな。

SEOBOK/ソボク(イ・ヨンジュ)

 これは良いスキャナーズ、もしくは童夢。最後の爆発に焦点を定めたストレートな語りが潔くていいなと思いました。(見終わって知ってびっくりしたけど『建築学概論』の監督・脚本のイ・ヨンジュだったんですね。)『私を離さないで』でもあったかな。

☆☆☆1/2

マリアンヌ(ロバート・ゼメキス)

 公開時の印象はあまりなかったのですが観て良かったです。

 ハリウッドの過去の堂々たる名作(それこそ『カサブランカ』みたいな)的な構えで撮りたいのかな?という部分と現代的なテンポの語りが必ずしもスムーズに融和してなくて、結果としてはぼんやりした仕上がりかな…と思いながら観ていた部分もあったのだけど、最後は自分でも驚くほど琴線に触れるところがあって、脚本は誰かと思えばスティーヴン・ナイトだったんですね!「孤独な魂の響きあい」といういつもの要素は健在だった気がします。

☆☆☆1/2

※ところで原題は『ALLIED』で、連合国側の、という意味があるのだけど、一方で同類、類似という意味もあって、見終わった後だと「ああ…」とその含意に感じ入る部分があるので、やっぱり原題が良かったかな。でも邦題に置き換えにくいタイトルですね。

長く孤独な狙撃(パトリック・ルエル)

 引退しようとしている殺し屋が掛け替えのないものを見つけてしまって、というこれまで57回くらい見たり読んだりしてきた話なんだけど、最高でしたね…。70年代映画みたいな溜めて溜めてからの渋いアクションが堪えられない。(こういうバランスがいいんですよね。)控えめながら意外とツイストなんかもあったりして、エンターテインメントとしても行き届いています。

 ところで湖水地方の風景がもう一人の主人公でもあって、『アイガー・サンクション』とか『北壁の死闘』みたいに光景がありありと浮かぶ克明な描写もよかったですね。

☆☆☆☆1/2

※『ラスト・ターゲット』こと『The American』の原作といっても通じるくらい同じ話ではあるけれど、あちらもちゃんと原作あるんだよね。

マザーレス・ブルックリン(エドワード・ノートン)

 原作どおりだから仕方ないけど、ノートンはトゥレット障害の主人公というのがやりたかったのかな。そういうの、演技が上手というのとは別に考えるべきでは?(もういいのでは?)という気分に正直なりました。

 それはさておき、原作とは時代と設定を大幅に変えての50年代ニューヨークが再現されているのがいい雰囲気で、しがない探偵が巨悪に立ち向かうという直球のハードボイルド。ジャズのサントラも気分を盛り上げてくれます。(しかしそれなら最初からオリジナル企画でやればよかったのでは、という気もするけどね。)面白かったのは確かですが、ちょっと芯は外してるかな。

☆☆☆1/2

※この映画の原作は未読なんですが、ジョナサン・レセムといえばディストピアSFハードボイルドの『銃、ときどき音楽』が最高です。

ドクター・スリープ(マイク・フラナガン)

 とても面白かったです。キューブリック版『シャイニング』にかなり寄せてた※けれど、話はキングにありそうな設定と展開で(原作未読だけどあらすじを読むと結構違う話だったみたいですね)、巧い折衷具合でした。キャスティングのはまり具合も絶妙だったし、個人的には死角なし。

 なんだけど、すごくよくできたTV(あるいはサブスクリプション)ミニシリーズの再編集映画版みたいな雰囲気でもあって。映画だな・・・(詠嘆)のような味わいには乏しい印象。その違いが何なのか言語化できないけれど、難しいものですね。

☆☆☆☆

※ダニーとお母さんのルックスがそっくりだったり、あのカーペット、そしてもっと言えばローズの風貌はアレックス風(時計仕掛けの)だったですよね。