フェイブルマンズ(スティーブン・スピルバーグ)

 もっと映画に対する憧憬だったり映画の腕前を磨いたりする場面が多いのかと思ったら、こんなつらい少年時代を送りましたという話が専らだったのでこちらもつらかったです。(まあ一度どこかで吐き出したかったのかもしれない。)

 何というか、スピルバーグは突飛な出来事だったり、特異な人物を描くのは上手だけど(というのはつまり真正面からの娯楽作ということだけど)、ドラマはちょっと凡庸で見るのがもたない感じがします。(雰囲気としては『未知との遭遇』が近かった。個人的にはあれはホラー映画と思っていますが。)

 あと、『A.I.』や『マイノリティ・リポート』の頃から顕著に感じられるようになったのは、物語の大きさやテーマに関わらず、どんな作品でも「箱庭」を撮っているような印象であること。人物が生き生きと動いているというより、手際よく人物、舞台、音楽のパッケージを提示されているような。それがよい方向に働けば面白い作品ということになるけれど、今回はあまり心に響くところがありませんでした。

☆☆☆