モガディシュ 脱出までの14日間(リュ・スンワン)

 90年代にこんなことが起こっていたなんて、という驚きがまずあるのだけど、邦画だったらアリバイ的な現地ロケとかなんちゃって外国人みたいな微妙な要素が多くなるところ、スケール感といい斟酌する必要がない規模で描かれていて(監督作でいうと『ベルリンファイル』も見事だったけど)、韓国映画凄いなと思いました。アクション映画としても、緩急あれどもクーデターが起こってからはずっと緊張感が持続していて、『ダイ・ハード』に比肩するテンションでした。

 現地雇いの少年の顛末とか、辺境へ不本意ながら派遣されてきた南の特殊工作局出身の参事官、彼と対立する北の参事官の現地協力者への侮り(後にしっぺ返しがあるのだけど…)とか、南の大使の奥さんの浮世離れしたかみ合わなさ、みたいな人物造形がグラデーション豊かで、なおかつ物語を織りなす要素として有機的に演出されているのが実に巧みでした。

 主人公である南の大使を演じるのはキム・ユンソクですが、出世欲に汲々とする小人物かと思わせて、いざ危機に直面した際には毅然とした人格者であるところを見せる、という陰影のある演技が実に達者でした。『哀しき獣』の朝鮮族のボスと同じ人だと思うと振幅の広さがすごいですよね。というか、役者陣はみな素晴らしかったです。

 監督のフィルモグラフィからいっても時期的なことからも多少なりともプロパガンダ的な意味合いはあったと思うのですが、率直な気持ちとして南北統一を願う切実さが感じられて心を打たれました。

☆☆☆☆