名前は知らずとも、誰でも一度は何かしらの彼の作品(とりわけ画像を載せた「Night hawks」は有名ですが)を見た事があると思われるエドワード・ホッパー。その画集です。
『ベンジャミン・バトン』の映画化に併せて、フィッツジェラルドの短編集が角川文庫から出されたのですが、そのカバーに「夜更かしの人々(原題:Night hawks)」が使われていたのですね。それが一押しになって急遽衝動買い。ホッパーの画はクリエイターたちにインスパイアを与えるところ大のようで、特に映画制作者にはその影響を公言している人も多い(ex.カウリスマキ、ヴェンダース)。確かに構図を引用したと思しき映画は結構あるような。そしてそれだけ吸引力のある画だと思います。
実は最近ホッパーを思い出したのは村上訳の『ロング・グッドバイ』を読んだ時で、ネットで感想検索をしていたらやはりどこかで言及されていたのでした(ちなみに「夜更かしの人々」1942、「ロング・グッドバイ」1953)。現代社会の都会や郊外の孤独を切り取った独特の画風は、「行間を読ませる」イメージ喚起力が大きくて、それがクリエイターに愛される要因なのでしょう。
ところで、自分が生まれてもいない時代の映画や風景写真に何故か郷愁を覚えるように、ファントム・ペインならぬファントム・メモリーというものがあるようで、彼の画の中の何かが僕のような素人にも強く訴えかけます。「心地よい寂しさ」を味わえるよい画集でした。
☆☆☆☆
※ホッパーは糊口をしのぐため映画宣伝のイラストレーションを描いたこともあったのだとか。やはり映画と縁がある人のようです。