幻想と怪奇2−宇宙怪獣現る−(仁賀克雄編)

 不思議とこども絡みのネタが多い。ホラーアンソロジーの第2弾(復刊)。
 こどもが主人公の幻想小説といえばレイ・ブラッドベリ。ごく幼い日の夢とも現ともつかない日常を描かせたら右に出るものはいない作家ですが、この短編集にも収録されています。『トランク詰めの女』:夜ごとのパーティにうつつを抜かす大人の世界を抜け出して、屋根裏部屋で冒険するジョニイ。彼はそこで怪しいトランクを発見したが、中に入っていたのは「きれいなお姉さん」だった。しかし大人は誰も信じてくれず・・・。導入がすごく期待させた割に意外とこぢんまり理に落ちてしまって残念。作者としては設定だけで満足してしまったのか?
 一方、収録作中でも出色だったのはヘンリー・カットナーの『その名は悪魔』:いつの間にかおじさんは「偽者」になっていた。でも気付いているのは子供たちだけ。日常を維持するために彼らは不思議な協定を結んでいたのだが・・・。大人が感知し得ない世界をむしろ動物に近い「こども」だけが嗅ぎ分ける、というのは定番の設定だけど、一歩踏み込んで「子供の生理」まで描いているところがポイント。親戚こどもグループ内の力関係の描写なども絶妙です。限られた枚数なのに、対するモンスターの生態にまでグロテスクなリアリティが。そして「子供の生理」から演繹された「子供が考えそうな」決着のつけ方とは・・・こうきたか!って感じで巧かったです。
☆☆☆