蠅(ジョルジュ・ランジュラン)

 いつものように、これまたうかつな話なのですが。『蠅』という最高に怖い小説がある、というのは以前から怪奇小説の基礎知識としては知っていて、てっきりクラシックな奇談だと思ってたら『ザ・フライ』というか『蠅男の恐怖』の原作だったのですね。しかも『蠅男の恐怖』という映画はかなり原作に忠実に作られていたのだということも今回読んでみて分かった。「頭の白い蠅を捕まえたんだよ!」という坊やのセリフがねぇ・・・あと映画の「頭の白い蠅」は小さい声で叫ぶんだよね・・・。あの映画も名作でした。
 ただ全体としては、書かれた時代を感じさせるどこか牧歌的な印象。こういうのも僕は好きですけど。収録作品の中では『安楽椅子探偵』が枚数少なめでシャープさがあり、叙述上のミスリードも利いていて一番面白かった。
☆☆☆1/2