11の物語(パトリシア・ハイスミス)

 まず最初に、短編集であるにも関わらず最後まで読み通せなかったことを報告いたします。
 なんというか、迫真の内面描写が生々しすぎて。世知辛い世の中だから、せめて娯楽の読書だけは現実逃避できるようなノホホンとしたものが読みたいと考えている僕にとっては、ちょっと修行に近かった。そもそも「渡鬼」がコンスタントにいい視聴率ということが信じられない私なので。世間にはそんなにマゾヒスティックな人が多いのか?わざわざあんなシンドイ家族のいざこざをテレビでまで見ようなんて・・・。一方、古典的少女漫画風のドラマツルギーの枠内に収まる話なら、主人公がどんなに過酷な境遇に置かれても安心して見たり読んだりできるんだけどね。たとえば韓流ドラマみたいに。
 という訳で、あえてジリジリと神経を逆撫でされるような読書体験をされたい方はどうぞ。はまる人には堪えられない物語なんだろうけどなあ。そういう強靭な胃袋が僕もほしい。