夜の旅その他の旅(チャールズ・ボーモント)

 『トワイライト・ゾーン』に関連した文章でよく目にする名前ではあったけれど、実際読むのは初めての作家。それもそのはず、邦訳された著作はこれ一冊だという。(しかも38歳の若さで亡くなっている。)「異色作家短編集」の復刊ありがとう。
 トワイライト・ゾーンといえば、まず名前が挙がるのがリチャード・マシスンで、著作もボーモントとは比較にならない程の数邦訳されているけれど、実はボーモントがかなり中心的な立場だったのだそうだ。ただマシスンがオチで読ませるタイプであるのに対して、余韻で読ませるスタイルなのが対照的。この短編集の収録作にはオチ勝負の作品もあるが(『越してきた夫婦』『夢と偶然と』等)、やはり情感に訴えるタイプの作品のほうが優れている印象だった(『鹿狩り』『夜の旅』等)。
 個人的に一番よかったのは『黄色い金管楽器の調べ』。どうせ負け犬人生と諦めかけていた闘牛士志望の青年に振って沸いたまたとないチャンス。しかしマネージャーである友人は何故かふさぎ込んで・・・ 闘牛士というテーマのせいもあってヘミングウェイ作品を連想する。けれども(作品全般的に)情緒過多にならない程よさ加減で、そういった点もスリック雑誌に収まりがよかったのだろうと想像された。
☆☆☆1/2