コウノトリの道(ジャン=クリストフ・グランジェ)

 前半緻密なサスペンスと見せかけて、結末へ至るクライマックスではアクション頼りの大味な展開になっていく、というのが何ともリュック・ベッソンプロデュース映画みたいなんだけど、『クリムゾン・リバー』の原作者なので当然なのであった。

 ただ生々しいディテールや、旅心くすぐられる各国の風景描写には確かに魅力があって、少なくとも前半のロード・ノベル的なテイストにはかなりぐっと来る(ちょっとエキゾ趣味過剰ではあるけれど)。この作品は作者の小説家としてのデビュー作。結局その後のビブリオグラフィーをみると「ヨーロッパ・コープ」的方向性を志向しているようで・・・「驚きの結末はCMのあとで!」みたいなあざとい演出を抑制できれば、もっと読み応えのある作品も書けるはずなのに、とそれが残念でならない。でも娯楽作と割り切れば結構楽しめるかな。
☆☆☆