サイドウェイ(アレクサンダー・ペイン) 

 大根の煮付けが美味しく感じられるようになったように、映画の嗜好も年をとると変化するようで。昔はただタルいだけに感じられたロードムービーも面白くなってきた。
 小説家を志しながら中学の英語教師として糊口をしのいでいるマイルス。彼は人はいいが、ワインについてうるさ過ぎるのが玉に瑕。それが理由なのか2年前に離婚し、いまでもそれを引きずっている。そんな彼の大学時代からの友人で、売れない俳優のジャックがついに結婚することに。二人は独身最後を飾るワイン産地を巡る旅に出たのだが・・・

 キャラクターがリアル。ドキュメンタリータッチというベクトルのリアルさではなくて、人間いいところも悪いところもある、というキレイごとだけじゃない人物造形。友人のジャックは、気が利いてて、優しくて、親友である主人公を彼なりにすごく思いやってるのが伝わってくる。のだが、どうしようもなく女にだらしない。(そういう人っているねー。)「俺は本能と衝動の男なんだよ。そういう人間であって、どうしようもないんだ」的セリフがあるんだけど、本当にそうなんだろうなと思わされた。知り合いを想起しながら。 
 一方、繊細さは長所かもしれないが、煮え切らなくて、かつワインにクドすぎる主人公。彼のワイントークは、見ててアイタタタってなるくらい周囲が引いてる。俺もちょっと気を抜くと必要以上に「映画語り」してるんだろうなぁ、と人ごとじゃなかったよ・・・という訳で、色々思い当たる節にグサグサ突き刺さってくる映画です。
 役者方面は、名バイプレイヤー、ポール・ジアマッティが本格的に脚光を浴びた作品であると同時に、ヴァージニア・マドセン復活の一作でもある。復活というよりむしろワイン話とシンクロするように、時間を経ていい具合に枯れた味わいが芳醇。昔は「ブロンド・ガール」のステレオタイプのキャスティングで安いイメージがあったもんな。

 ともあれ、人生の孤独に心が折れそうになった時、なにげない友情のありがたみを噛みしめたくなった時、改めて観返してみたい作品であります。

 ところで「ベスト・パートナーはやっぱり趣味が合う異性」みたいな落としどころでもある映画だったけど、それはどうかなぁ?趣味みたいな具体的なことの一致じゃなくて、興味のツボが同じみたいな感性の志向の一致の方が重要じゃないの?・・・あれ、映画の感想にそんなマジトーク必要なかった?空気読めてないの俺のほう?

☆☆☆1/2