明日への地図を探して(イアン・サミュエルズ)

 そもそもいい年のオジサンである私が、この映画が想定している「お客さん」ではないことが大きいのだと思うのだけど、物語が「インスタでいいねするような心地よさ」に終始するので、結末に至ってもなるほどですね…という感想になりました。

 タイムループする理由というより彼女そのものが謎、というのがポイントだったのかな。それにしても『ハッピー・デス・デイ』2作があまりにも上手だったから、しかもその同じ監督の『スイッチ』で主演の女の子※がこちらでもヒロインだったから、つい比較してしまいますよね…

☆☆☆

※なんかシアーシャ・ローナンとフローレンス・ピューを足して2で割ったような子だなと思いました。

荒野のホームズ(スティーブ・ホッケンスミス)

 ホームズの面白さって「科学的」を建前にしたケレンとか黎明期の(広義の)冒険小説のワクワクが肝だと思うので、なんか違うんだよな…という違和感が先に立って楽しめなかった。そういうことを抜きに独立した「西部が舞台のミステリ」だったら素直に面白かったのかもしれない、と思いました。

 それとお兄ちゃんのことだけど、それだけの向学心があれば事後的に字って読めるようにならないものなのかな?

☆☆☆

JUNK HEAD(堀貴秀)

 神はディテールに宿るとはよくいったもので、細部のこだわり、リアルさが尋常ではない。それでいてカメラに映る範囲で完結した箱庭といった感じはせず、こういう世界が確かに存在するという感触を獲得しているのが素晴らしかったと思います。(実写映画ですら「外の世界」が感じられない作品がたくさんあるのに。ちなみに完全に余談ですが『ノー・タイム・トゥ・ダイ』に感じた一番の不満はあとから考えるとそこでした。)

☆☆☆☆

※そういえば引用元であまり言及されてるのを目にしないのだけど、僕は椎名誠のSF諸作を思い出しました。こういう感じのビジュアルを思い描いてた!

とんかつDJアゲ太郎(二宮健)

 マンガなら「いい感じのDJプレイです」と描写されたら読者が勝手に補完するものだけど、映画だと具体的に音楽が流れるから難しいよな、と思いました。(そういう意味で先日見た『音楽』は改めてすごいと思う。)

☆☆☆

アメリカン・ゴッズ(ニール・ゲイマン)

 テレビシリーズがシーズン2で失速して観るのをやめたのだけど、結末が気になるので原作を手に取った次第です。文章は簡潔なのにやたら衒学的なので読むのにとても時間がかかったな…

 今更気づいたけど、つまるところ「女神転生USA」だったんですね。それとダークファンタジーの構えだからそういうつもりで読んでいたけど、実際はファンタジーの意匠をまとったミステリの構造だったように思います。(フーダニット、ワイダニットというか。)伏線が効いていました。

 個人的には、レイクサイドの生活にまつわるパートがニューヨーカーに掲載されるようなミニマリスティックなトーンで描かれるのでとても好きでした。面白かったです。

 しかしテレビのシーズン1は、小説では行間で語っていることに関する絶妙な補助線として機能していたから惜しかったなあ。せいぜい2シーズンで語るべき物語なのに欲張りすぎたのではなかろうか…

☆☆☆1/2

ムーンサルト ソ連極秘宇宙計画(アレクセイ・フェドルチェンコ)

 ソ連の宇宙開発にまつわるフェイクドキュメンタリー。とりたてて面白くはないのだけど、リアルフッテージと思われる箇所の生々しさが興味深かった。しかしかの国でこういう題材で撮ることができたところがより興味深いと思いました。

☆☆1/2

インフィニット 無限の記憶(アントワーン・フークワ)

 今はしょぼくれた生活を送っているけど、本当の自分はこんなもんじゃないんだ、いつか覚醒して「何者か」になるんだ!という悪い意味で「典型的なYA小説」的なアクション映画だなと思いました。(原作ありだけど、やっぱりそういう話なのかな。)

 大がかりな予算がかけられているからボーッと見ている分にはそれなりに楽しいのだけど、ガンフー的なアクションも今となっては新鮮味に乏しいし、『イコライザー2』のタイトさが素晴らしかったから期待しすぎちゃいましたかね…やはり映画は物語次第なんだと思いました。(そういう意味では冒頭のレストランのマネージャーになるため面接を受けに行くところが一番面白かったですね。)せっかく作ったのにコロナでリクープが難しくなったからとりあえず配信します、ボチボチ面白いとは思うので…というこれまた典型的なアマゾン公開パターンでした。

☆☆☆