くちづけ(増村保造)

 若尾文子最高!とつい先日書いた舌の根も乾かぬうちに恐縮ですが、野添ひとみ超可愛い!!そりゃ川口浩(主人公)も実生活で結婚するわー・・・と思いました。
 選挙違反で収監されている父を拘置所に訪ねた欽一は、店で邪険にされていた娘を見過ごせず、思わずお金を工面する。彼女の父は妻の入院費用が賄えず、公金を使い込んだ罪でやはり収監されていたのだった。思うに任せない人生に苦しんでいる似た境遇のふたりは惹かれあうが、素直になれない欽一。彼の態度に思い余った章子は、父の保釈金のため、金持ちの道楽息子に身を任せようと決意するのだが・・・
 まあ見事なまでのソリッドなメロドラマ。拘置所で出会ってからクライマックスの「くちづけ」まで一気呵成のボーイ・ミーツ・ガール・ストーリー(実際一昼夜の話です)。ランタイム74分ということもあり、ほとんど一筆書きみたいな語り口。今のところ増村マイベストの『巨人と玩具』の高速ストーリーテリングも相当なものだったけれど、この初監督作で既に完成されてたんですね。海外版ポスターのキャッチ「Masumura's incredible debut」は伊達じゃない。
 ところで川口浩といえば、我々世代には「川口浩探検隊の隊長」である訳で。騙されると分かっていながらも、どんな怪物が登場するのかとそれなりにワクワクして水曜スペシャルを見ていたくせに、嘉門達夫の歌に笑い転げる頃には、幼いながら「こういう役者の後半生ってどういう気分なんだろう・・・」と思ったものでした。実際に出演作を観たのは大人になってからなんだけど、タイプキャストというのか、あて書きだったのか「一見天邪鬼な青二才だけど、芯には譲れないものがある」という青年役が多かったようです。器用に何でも演じられる役者ではなかったことに本人としては限界を感じたのかも知れませんが、この頃の彼は本当に光っていたんですね。
 さらに、主人公の母親(政治狂いの夫に愛想を付かして3年前に飛び出し、今は宝石商として暮らしている)が最後に見せるハードボイルドな佇まいがとても格好良い・・・と思ったら、こちらも川口浩の実母でした。知らなかった。ちょっとびっくり。
☆☆☆1/2