『(500)日のサマー』へのアンサーとして(時系列では逆だけど)。『サマー』も見ていて相当胸が苦しくなる映画でしたが、まだまだ技巧で彩られていた分、ロマンティック成分に救われていた印象もあります。この映画は「あ痛ててて・・・もう勘弁」と思わず口にしてしまうようなリアルさがありました。
しがないTVの劇伴作曲家ピーターは、ある日5年も付き合った彼女に手ひどく振られてしまう。失恋の痛手を癒すため、かつて彼女が行ってみたいと口にしていたハワイへ。ところがそこには彼女が新しい彼と投宿していて・・・
ジャド・アパトー組のコメディの常として、よく言えば異化効果、悪く言えば全体のテンションからすると中途半端な、曰くいい難い「現実味」がこの映画でも折々に挿入されます。他の作品だとちょっと醒めちゃったりして必ずしも物語に乗り切れなかったりもするのだけど、今回に関してはツボだったのか不思議と気持ちよく観ることができました。(脱線しますが)顧みると、ふた昔前くらいに流行っていたオフビート・コメディは、「コメディの定石を脱臼する」という点で作法が確立していて、観客も見方に(アパトー作品ほど)迷わなかった気がしますね。強いて言えば、この作品はいわゆる「ワーキング・タイトル」製作の映画のパロディ的な側面があったから面白く観ることができたのかも(『ノックト・アップ』もやや近い)。以下、特異な点メモ。
・要所で忠告してくれるゲイの友達、のような頼れる友人が登場しない。
・状況を引っ掻き回すトリックスターは、なんだかんだで話を収束する切っ掛けの役割を負っているものだけど、この作品では本当に只アレな人。
・頼れる味方といった佇まいで最初登場した親切なウェイターに、ホテルの外でケンカの仲裁を頼んだら、今はオフじゃボケェ!と殴られる。
・兄夫婦に「アバズレ」と忠告される派手目の元彼女(ヒロイン1)に対置されるヒロイン2は、品行方正なガールスカウト、になりそうなところをやっぱりちょっとはじけた女の子に(ミラ・クニス好演!)。
ところで、投げっぱなしになりそうな元彼女のエピソードをちゃんと回収する気配りが好印象でした。ディテールを大切にする映画に外れなしですね。
☆☆☆☆