3時10分、決断のとき(ジェームズ・マンゴールド)

 銃撃戦よりむしろ対話の攻防が見所のような西部劇でした。皆さん書かれているように、甘言で主人公ダンクリスチャン・ベール)の心を揺さぶる無法者ベン(ラッセル・クロウ)のやりとりは、禁欲の生活を貫こうとする修道士に囁きかける悪魔のよう。
 ところがその一方で、折に触れ箴言を口にするように、また食事の際に(一応不本意な顔をしながらも)アーメンと唱えるように、ベン自身にもキリスト教に対する屈折した思いがあるのではないか?という描写が挟まれます。それが聖書にまつわるエピソードの吐露を経て、結末の思わぬ展開につながり、最後には銃把に象られた十字架に収斂する。というように、金と自由が全てだとうそぶきながらも、ダンのような愚直な生き方を否定しきれないベンのアンビバレントな内面と呼応するような物語の構造というか様式的な部分にもグッときました。
 ところで忠犬みたいなチャーリーがかわいかった(かつ不憫だった)ですね。
☆☆☆☆
※結末の展開に『キラキラ』というやなせたかしの絵本を思い出したのは僕だけだろうか・・・