魔物を狩る少年(クリス・ウッディング)

 プロシアの飛行船に壊滅的な打撃を受けた戦争も終わり、ようやく復興の途についたヴィクトリア朝のロンドン。しかし産業革命に沸く大都市の影では、魔物や切裂き魔が跳梁していた。魔物狩りを生業とする若干17歳のサニエルは、ある日何者かに魅入られた美少女を助ける。どうやらその裏では強大な秘密結社が糸を引いているようなのだが・・・
 という、改変歴史もので、伝奇ものでかつ秘密結社もので(しかも切裂きジャックみたいな登場人物まで)、というプロットだけなら100点の話なんですが。いかんせんそれぞれの要素の突込みが浅い。ごくさらっとした(映画でいうと『ヴァン・ヘルシング』みたいな)アクションものに終わってしまってる。これが緻密に構成されていれば、『フロム・ヘル』(コミックの方)になるんだろうけれど。(映画のほうは、いまだに『スリーピー・ホロウ』とごっちゃになります。原作は夏目漱石内田百輭が書いた随筆みたいな話なのに。脚色っていうレベルじゃねえぞ。)
 作者は1977年生まれで『天空のエスカフローネ』や『風の谷のナウシカ』が大好きなOTAKUイズムあふれる青年らしいので、内容よりもむしろ設定をいろいろ考えるのが好きなんだろうな・・・と何となく想像されてしまった。
 とはいえ読んでいる間は退屈しなかったし、こういうB級な感じ、俺は嫌いじゃないぜ!
☆☆☆