ワイルド・レンジ(ケビン・コスナー)

 イーストウッド風のリアル殺伐西部劇の線を狙ったのだろうか。

 コスナー演じる、ボスに忠実で、仁義を重んじ、過去に陰を秘めた男。と書くとなんか「健さん」みたいなんだけど、実際そんな感じ(などと所謂「健さん」映画をまともに見たこともないくせに雰囲気だけで断言してみる)。

 それはさておき、劇中では主人公のカウボーイが、過去に南北戦争で特殊部隊に所属したことに始まって殺し屋稼業で糊口をしのいできたことが語られるのだが、ここらへん何となく「特殊戦闘技術」と「過去のトラウマ」をいっぺんに説明できるからB級アクション映画(あるいは小説)で重宝される「ベトナム帰りの男」みたいでちょっと笑った(「戦慄のシャドウファイア」参照)。

 だが本編自体は、あたりまえなんだけどちゃんとA級で、あまり話題にもならなかったのが残念。(リアルタイムで観てないのに俺よく言い切った。)コスナーの凋落加減は痛々しいな。ともあれまず画作りが素晴らしく、予算がかけられるのは素敵なことであるなあと感心。一方「リアル」の面なのだが、銃撃戦がまったくスタイリッシュではなく、泥臭い。マカロニチックな派手で残酷なファイトシーンでないのはもちろん、この映画での「早撃ち」とは相手の急所を先に打ち抜くことではなく、相手が死ぬまで全弾を叩き込むことなのだ。さすがにヒットした相手がふっとぶところには映画映えするようにワイヤーが導入されていたけど、至近距離の打ち合いなのになかなか当たらなかったり、1発当たったくらいでは勝負がつかなかったりというバタバタした銃撃戦の描写は、なるほど実際はこんな感じなのかもねという説得力に溢れていた。

 歯止めが利かなくなるとなにをしでかすかわからない、生き残るためには手段を選ばないという荒くれものの主人公の造形がコスナー映画としては新機軸(まあ「スコーピオン」はあったけど)ではないか、という点に冒頭の「イーストウッドの線」狙いを感じたのだが、残念ながら最後の最後でやっぱりコスナー映画になってしまうのが・・・つまりグダグダロマンティック路線。もっとストイックで不器用な男で通してくれればよかったのに。

☆☆☆