アクアマン(ジェームズ・ワン)

 ヒーローものなんだと思って見てたら、実写版「崖の上のポニョ」その後、だったのでびっくりしました。

 面白そうなことは全部やってみましたというサービス精神がよかったですね。

☆☆☆1/2

 ※1985年、俺の父と母が出会った年だ、っていうから、え?俺より年下なのかってびっくりしたけど、それはそうか…

愛がなんだ(今泉力哉)

 総じて役者陣は素晴らしかったけれど、若葉竜也がとにかくすごかったですね。ワンカットの中で驚き、喜び、悲しみがないまぜになった感情が現れる。(演技とはそういうものだとは思うけれど)本当に本人としてそう感じているとしか思えない表情。よくあんな演技ができるな、と感心しました。

 そのような中で、唯一不満だったのが、マモルがテルコが料理しているのを後ろからちょっかいを出すシーン。あれは本来なら女性慣れしている「恋愛強者」の振る舞いを演出している場面だと思うのですが、終盤、「山田さんがそんな気持ちでいるとは気づいてなかった」と嘯くマモルのセリフは「素でそう思っている」描写になっていたこと(本当に愛していた訳ではないが、逆に気づいていて蔑ろにしていた訳でもない)とのギャップ、それとああいう振る舞いができる男は(根拠はどうあれ)いつでも自信満々なのであって、すみれさんに対しても臆することなくアプローチできると思うのですが、そういう人物ではなかったという結論だったから、つまり物語としての平仄が合っていないというか、あのシーンだけが結果としてノイズとして浮いてしまっている気がしたんですよね。

 ともあれ、恋愛という関係性のままならなさ、ほとんど狂気と正気の狭間を行くようなどうしようもなさがよく描かれていたと思いました。誰しも過去の経験に照らして来し方を顧みてしまうような、話題になったのも納得の作品でした。

☆☆☆☆

※それはそうとして、動物飼育員なめんなとは思ったな。(一種のファンタジーとしての着地なんだとしても。)

ビバリーヒルズ・コップ(マーティン・ブレスト)

 冒頭、例の軽快なテーマ曲が流れるんだけど、それでもごまかしきれない荒んだデトロイトの現状がドキュメンタリー風に撮られてて、あれこんなだったっけ?とまず思ったのですが、その後で事件の発端となる古い悪友の帰郷が描かれると、ああ『ムーンライト』的なバックグラウンドがあったのか、忘れてた…となりました。

 最初のクラッシュシーンこそ派手だけど、総じてアクションは控えめで、そういえば映画というものが今みたいに複数の制作会社が名を連ねないと作れないような大規模な博打みたいじゃなかった頃はそうだったよね、と80年代アクションを思い出したり。

 口八丁手八丁のエディ・マーフィの勢いで作られたような気がしていたけれど、見返して見ると意外とかっちり構築された刑事ものでした。そしてちゃんと面白かったです。

☆☆☆1/2

ライト/オフ(デヴィッド・F・サンドバーグ)

 こんなオバケいたら怖いな、という思いつきの一点突破がいっそ清々しいという映画でした。役者さんたちが皆達者だから長編でもぎりぎり持った感じかな。

 ここから監督を『シャザム!』に抜擢する思い切りがすごい。

☆☆☆

フッド:ザ・ビギニング(オットー・バサースト)

 アクションは頑張っていたけれど、脚本がガタガタだったのが残念でした。そもそも悪役たちの「アラビア軍に資金提供」という策略の目的が全然わからない。(な、なんだってー!っていう意外性以外に必然性がなさすぎではないでしょうか…そもそも「アラビア軍」という設定もよく分からないけれど。)

 物語自体はかなりケビン・コスナー版を意識してたのかな(僕は佳作だと思っているのですが)。盟友となるジョンの設定は完全にモーガン・フリーマンだったもんな…

☆☆☆

シャザム!(デヴィッド・F・サンドバーグ)

 家族から自尊感情を傷つけるような揶揄いを受け続けると長じて心を病むと育児の本でよく目にするけど、悪役シヴァナはそんな感じだったから辛かった。(寄る辺なきもの、という意味で主人公の鏡像でもあるけど、これはヒーローものの定番ですね。)でも考えてみたら、魔術師のお爺さんが「英雄」候補として呼びつけたあげく、お前はふさわしくないとか言っちゃうのが最後の一押しだったのではなかろうか(ちっちゃい子相手に!)。そんなだったら事前によく吟味した上で呼べばいいのにね。

 ともあれ、ビターな味わいもあって、予想よりずいぶん面白かったです。マーベルにない感じの作品だったのも良かったのかな。

☆☆☆1/2

ターミネーター:ニュー・フェイト(ティム・ミラー)

 (ネタバレです。)全体的にすごく無理がある脚本で、「スカイネット亡き後も送り込まれ続けるターミネーター」という設定も飲み込みにくいし、ダニーが標的として狙われる理由も若干弱いし、それを教えてくれるのがこれまたターミネーター(改心後)というのも苦しいと思いました。リンダ・ハミルトンシュワルツェネッガーの共演という前提ありきだからとは思うけれど、もうちょっと企画を煮詰めてからスタートすればよかったのにね。

 根本的な話をすれば、タイムマシンがこんなにカジュアルに使える世界、というのがそもそも無理があると思うんですよね…2作目までは一期一会感がまだあったけど、これだけ乱発されたらもうどうだっていいや…という感じが否めない。今作に新鮮さが感じられる点を敢えて挙げれば、メキシコの日常を描いたザラついたシーンに突然機械生命体が!という異物感だったと思います。

☆☆☆

※リージョンっていうから、それってレギオンでは?と思ったのだけど、英語だと「リージョン」という発音になるんですね。