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運命のボタン(リチャード・マシスン)

 映画公開にあわせた日本独自編集の短編集(という企画だったもの)。超定番の「二万フィートの悪夢」はさておき、概ね水準作といった感じで、おっ?となる未読作がなかったのが残念。(個人的には『激突!』が粒ぞろいで良かったのですが。確か文春文庫の『ミステリーゾーン』にも結構マシスン作品が収録されていたような・・・)
 この集中でまずまず良かったのは「四角い墓場」と「声なき叫び」。機械仕掛けのボクサーに代替され、人間がボクシングを行わなくなった世界。元ボクサーのケリーは、今はマネージャーとして糊口をしのぐ毎日だった。ところがそんなある日、自前のロボットが故障してしまう。契約を履行するため、彼はロボットに扮してリングに上がることを思いつくのだが・・・:「四角い墓場」。精神感応の実験を自らの子供たちを被験者に実施してきた4組の科学者たち。アメリカに移住したニールセン夫婦は火事に巻き込まれ、ひとりパールが取り残されてしまう。しかし世間との交流を断絶して生きてきた彼にとって、世界は想像以上に過酷なものだった・・・:「声なき叫び」。
 読んで改めて思うのは、良くも悪くもツイストの人なんだということ。前者はチャールズ・ボーモントならロートル・ボクサーの悲哀が味わい深い好編になったであろうし、後者はスタージョンならもっと「彼らの世界の見え方」について独特の視点で描いたような気がします。翻ってマシスンは、どこまでもプロット→設定ありきの描写なんですね。これは作家の資質なので好みもあるのだけど(マシスンは好きな作家ですが)、図らずもそういうことに気付かされた短編集でした。
☆☆☆
※「四角い墓場」はショーン・レヴィ監督、ヒュー・ジャックマン主演で11年公開だそうです。だいぶん話は変わってるみたいだけど・・・そういえば肝心の「運命のボタン」って原作を反映しているのはごくさわりの部分だけでした。やっぱり。