マンダロリアンS1(ジョン・ファブロー、デイブ・フィローニ)

 すごく評判がよかったので楽しみにしていたのですが、普通に面白いという感じでした。まあしかし、そもそもスターウォーズという物語自体、いたずらに複雑で奥行きのある展開を求めずに「普通に面白い」感じ路線でよかったのでは、という気持ちに改めてなりました。

 個人的には、元々のエピソード4~6の歴史的な意義や当時他に比肩する規模のない大SF活劇をリアルタイムで映画館で目撃した興奮(あれは何物にも代えがたいし、今となってはその有難みを再現することも無理だし、ということが特定の世代にとって刻印になってるのが事態を難しくしている気がします)をさておけば『最後のジェダイ』が一番よくできていたと思っているのだけど、というのも硬直化した体制を打破するという最初のスターウォーズの精神を現代的に再現するなら、(結果的にアナキンというモンスターを生んだ)ジェダイ※ってどうなの?という話は避けて通れないはずだから。

 しかし少なからぬ数のファンの反発を招いたということは、続けるためのブレイクスルーより「普通にそれらしい感じで面白い話」を何度もしてほしいだけなんだなと僕も思いました。最初ライアン・ジョンソンを褒めてたスタジオが急に手のひらを返したのも正にそういうことなんでしょう。

 だいぶん前段が長くなりましたが、派生作品がことごとく物足りない結果だった中で「マンダロリアン」が突出して成功したのは、本体シリーズの過去作で言及されているなどの枷が比較的少なくて自由度が高かったのと、制作陣がファン向けのくすぐりをよく心得ていたからだと思います。

 西部劇の枠組みの中で、七人の侍や脱獄もの賞金稼ぎものといった安心感のある定番の話を展開する、でもアニメ含め全シリーズから知る人ぞ知るファンへの目配せ要素がある、加えて盛り上がるツボを押さえている、といったところでしょうか。

 全体としていえば凡庸だけど、例えば8話などは驚くほど要素を捌く手際がよくて(さすがタイカ・ワイティティというべきか)、このシーズンの印象を底上げしていた気がします。

 ところでスターウォーズの根本的な問題として、シリーズを続けようとする限り銀河に平和が訪れないということがあると思います。ファンの潜在的なストレスとして、いつまで付き合えば物語に決着が付くんだ?ということになる。僕はもうマンダロリアン含め見ないと思うけど、これから帝国崩壊後にファースト・オーダーが台頭する過程の辻褄合わせをするようですね。

 話を最初に戻しますが結局「普通に面白い」がベストな方向性だったということなのかもしれません。でもビジュアル含めこんな話見たことないな!という驚きはもうないでしょう。同じシリーズでずっと商売する、というのはつまりそういうことなんだと思います。

☆☆☆1/2

※ 新三部作の公開当時からルーカスの意図がいまだに分からないのだけど、あんな官僚的な組織ないですよ。3本でアナキンをダークサイドに転じさせる必要があったからだとは思うけど。それにしてもね。

※ ところで、音楽があまりにロッキーなのはそういうオーダーだったのでしょうか?カール・ウェザースが出てるからその印象が強くなるのかもしれませんが…