摩天楼の身代金(リチャード・ジェサップ)

 一部ですごく高評価と聞いて読んだのですが、あらすじ紹介からは、おもしろコンゲーム、もしくはケイパーものを予想してたら、ウィリアム・ゴールドマンとかトレヴェニアンみたいな殺伐が顔を出すのが独特の味わい。もしかしたら80年代の時代性かも。(物語にも影を落とすベトナム戦争の残響か。)※

 ともあれ噂どおりとても面白かったです。主人公と対峙する超高級マンション/ホテル支配人が同じ元ベトナム特殊工作員という出自が合わせ鏡の造形になっていて、手の内の読みあいがプロフェッショナルらしい説得力がある描写で素晴らしかった。登場人物はみな奥行きがあり、物語のための人形という感じがしない。

 ところで作者は意外や『シンシナティ・キッド』の原作者でもあって。そちらの原作も読んでみたくなりました。

☆☆☆1/2

※だからどっちかというとドートマンダーというより『蘇る金狼』的。でも大藪は60年代の小説なんですね。まさか参照してるとか?