サスペンスアクションの佳作『セルラー』の香港リメイクです。ヒロインを助けるために奔走する主人公が「学生」から「糊口をしのぐために借金取りをしているお父さん」に変更されていたり、一見うだつが上がらない感じの警官ウィリアム・H・メイシーが、有能な刑事だったけれど過去の失敗が原因で閑職にやられているニック・チョン、という風に設定や配役イメージが変更されている箇所が、トータルとしての作品印象の変化につながっていたように思います。オリジナルも良かったけれど、これはとても良いリメイクでした。
とはいえ、最大の変更点はやはり大きくアクションに舵を切ったところでしょうかね。どんどんエスカレートしていくカーチェイスを見ていたら、やっぱり香港映画は相当ムチャしやがるなあ・・・と久しぶりに嬉しくなりました。
ところでそんなに監督作品を観てるわけじゃないけど、ベニー・チャンはここぞ、というキメの画をちゃんと「決めて見せる」のが上手いですね。この作品でいうと、悪党一味から辛くも逃げ切った主人公がこれからどうしたものかと途方にくれる山頂のシーンや、高層ビルを遠景に望む郊外の空き地で必死の逃走を試みるヒロイン、のように登場人物の孤独感や寄る辺なさといった心情を端的に画として捉えるセンスが秀でているような気がします。とくに後者のシーンは、この映画の中で一番グッときました。
役者陣はルイス・クー、ニック・チョン、といったジョニー・トゥ常連組ももちろんよかったのだけど、今回は何と言ってもリウ・イエの悪役ぶりがたまらなかった・・・目が怖えぇよ。
☆☆☆☆