エレクション2(ジョニー・トー)

 凄かった。僕にとっては『ゴッドファーザー』に比肩するシリーズになりました。
 血で血を洗う会長選を巡る抗争から2年、ロクは無事任期を終え、次期会長選が実施されることになる。ジミーは推されるものの、堅気としての大きな契約を前にして辞退する。一方の現会長ロクは、掟に外れる再選を虎視眈々と狙っていた・・・
 ロクは暴力の持つシンプルな影響力に魅せられて、いつしかそれそのものに耽溺してしまう。一方のジミーにとっては、そもそも「真っ当な商売」のチャンスを掴むための組織であり、本来は暴力を避けたかったのだけれど、直面せざるを得ない事態に巻き込まれ、結局「足を洗うため」の冷静な判断に基づいて、一番の極端に走ってしまう。これは穿った見方をすれば、「相手を徹底的に叩き戦意を喪失させることで、結果的に調和と平穏をもたらすことができるはず」というアメリカ的な論理の寓意のようにも取れます。
 しかる後に、2人には相応しい結末が待っているのですが・・・どんなに高潔な意思によるものだとしても「理性的な暴力」など存在しないし、こと暴力に関しては「これを限りに」ということはあり得ない、という監督の冷徹な世界観の表明だったような気がします。
 ところでトー組役者陣はやはり達者です。先日観た『コネクテッド』と結構キャストが重なっているのだけど、ジミーを演じるルイス・クーはあの時の主人公のようなひ弱さは微塵も感じられないし、ふとした瞬間に暴力の世界に身を置く不穏さが顔を覗かせる。頼れるベテラン刑事だったニック・チョンは、使い捨てにされるヒットマンの悲哀を実によく体現していました。
 ところでニック・チョン絡みでいうと、この作品で一番好きだったのは「ジミー夫婦がレストランでの食事の帰り、車中でヒットマンに襲われる」というシーン。一触即発の息詰まる時間が流れる中、妻の蛮勇という他ない無茶な反撃で、何となく肩透かしになって毒気が抜かれて、暗殺を諦めてしまうのだけど、微妙な感情の機微を捉えるトー監督の演出の的確さがよく現れていたように思いました。
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